「口約束の漁業協定ない」 ロケ報道官が「比中合意」否定
南シナ海問題で比中首脳による「口約束による漁業協定」をロケ報道官が否定
フィリピンが排他的経済水域(EEZ)としている南シナ海(比名・西フィリピン海)の南沙諸島周辺で中国船が活動を続けている問題で、ロケ大統領報道官は23日、比中首脳による「口約束による漁業協定(合意)」の存在を否定した。ドゥテルテ大統領自身のこれまでの説明と食い違っており、今後の中国に対する政策にも影響する可能性がある。
元最高裁判事のアントニオ・カルピオ氏が、ドゥテルテ大統領と習近平・中国国家主席による漁業に関する口約束について説明を求めたことに対して、ロケ大統領報道官が23日に声明を発表。「両首脳間で交わされたとされる『口約束による漁業協定』や、中国船が西フィリピン海にとどまることを奨励したなどの話は何の根拠もない臆測で、事実ではない」と否定した。
報道官は、漁業協定は書面による条約以外はありえないとした上で「比水域内における不法な漁業は、いかなる国であってもドゥテルテ大統領は容認しない」と強調。「無意味に状況を悪化させる悪意ある臆測やデマを流すのはやめ、新型コロナ禍で互いに助け合う生産的な活動に時間と労力を集中してほしい」とも述べた。
ドリロン上院野党院内総務も24日、ラジオのインタビューで報道官の発言に同意。「現行法では漁業協定は上院で批准された時のみ有効だ。拘束力のある比中間の口頭の合意は存在しえない」と述べた。
ただし、今回のロケ報道官の説明は、前任のパネロ氏(現・大統領首席法律顧問)やドゥテルテ大統領自身の2019年の発言と大きく異なる。同年6月にはリード礁(比名レクト礁)で中国船が比漁船に当て逃げし、沈没させる事故が発生した際、中国船による漁を禁止しない理由を問われた大統領は、南シナ海の領有権問題を事実上「棚上げ」することで合意した16年10月の比中首脳会談で習主席と交わした口頭の「アグリーメント(合意)」により、比漁船によるスカボロー礁周辺などでの漁が可能になったと発言していた。
当時大統領報道官だったパネロ氏も19年7月、合意について「暫定的な譲り合いのようなもの。文書にはなっていないが、非公式な合意以上のものだと私は思う」と述べ、「法的拘束力」もあると説明していた。(谷啓之、セレリーナ・モンテ)