軍装備近代化「3分の2完了」 インド製ミサイル導入も
ドゥテルテの舵取り5・国軍装備近代化が進められ、ミサイル導入も計画
太平洋戦争中の「死の行進」や、運転直前に凍結された原子力発電所で知られるバタアン半島。首都圏西方にあるモロン町(バタアン州)の沖で、フィリピン国軍創設85周年を記念した観艦式が先月16日に開催された。南シナ海(比名・西フィリピン海)に浮かぶドック型輸送揚陸艦タルラックの艦上では、ロレンサナ国防相やガバイ参謀総長ら国軍幹部が艦隊の訓練の成果を見守った。
▽27隻36機のショー
観艦式は軍艦など海軍の最新装備を披露する一種のショーだ。国民向けには血税を無駄に使わず、有事に備えていることをPRする。比海軍は主力艦船が勢ぞろいする観艦式を10年以上行っていなかった。
この日の主役は軽フリゲート艦ホセ・リサール、ドック型輸送揚陸艦ダバオ・デル・スールなど海軍艦船27隻。縦列を組むなど、海上でパレードを見せた。
「ホセ・リサール」は比海軍初のミサイル搭載艦。昨年8月には初任務として、ハワイで10カ国が参加した海上演習「環太平洋合同演習(リムパック)」(米海軍主催)に参加している。
空軍機の飛行展示も併せて行われ、航空機36機が参加。2017年のイスラム過激派によるミンダナオ島マラウィ占拠事件や共産党の軍事部門、新人民軍(NPA)との内戦に出動してきた軽戦闘爆撃機FA─50も爆音を響かせ、上空を通過した。
▽大統領の支援
海軍広報部長代理のマリアクリスティーナ・ロハス中佐によると、この日の軍艦や航空機は、国軍装備の近代化プログラムで獲得した海・空軍の資産だ。
タルラック艦上では、国防相主宰の簡素な式典も行われた。最高司令官のドゥテルテ大統領の姿はなかったが、ガバイ参謀総長は「国軍の近代化のため、前例のない支援をしてくれた最高司令官に我々は心から感謝している」と述べた。
ロレンサナ国防相は、観艦式で軍担当記者に「近代化計画の約3分の2を終えた」と説明している。
国軍の装備はこれまで、更新の遅れによる陳腐化、老朽化が指摘されてきた。最新の装備を手に入れたい軍には、厳しい資金面の制約があった。しかし、ドゥテルテ政権で大きく変わり、軍の装備にかなりの予算が割り当てられた。
英字紙ビジネスミラーによると、比の21年装備近代化予算は270億ペソだが、22年までの5年間で、外部からの攻撃に対する防衛装備の予算は3千億ペソに上る。
▽「専守防衛」
国軍は、さらにインド製の超音速中距離巡行ミサイル「ブラモス」を22年までに調達し、地対空ミサイルとして配備する計画だ。
ロシアとの共同開発で、最大速力マッハ2・8(時速3427キロ)。比は世界で最初に購入する国になると、インドなど国外で報じられている。比側の資金面が課題で、現在は政府レベルで購入条件の最終的な折衝段階とみられる。
「相手が殴ってきたら、殴り返して鼻血ぐらいは出させる反撃手段を持つ」「西フィリピン海で中国の脅威に対抗する、純粋に防衛目的だ」。新ミサイルについて、国防相は「抑止力を持つ比初の兵器になる」と述べる一方で「専守防衛」を強調した。
また「沿岸監視プロジェクト」に基づくミンドロ島、パラワン島、北イロコス州の3つのレーダー基地について、国軍広報担当のアレバロ少将は「すでに運用中。比の防空識別圏の西部全域が完全にカバーされた」と説明。「沿岸監視分遣隊(LMD)と沿岸監視局(LMS)を強化し、パラワン島エルニドなどを拠点に領海内を通過する船舶の監視を強めている」と付け加えた。
ビジネスミラー紙は「軍の能力向上プログラムの下での装備の継続的な増強は、ドゥテルテ政権の最大の遺産となるかもしれない」と指摘している。(谷啓之)