南シナ海での攻撃、比を防衛 米国務長官、初めて明言
米国務長官が、南シナ海で航空機などが攻撃を受けた場合、比を防衛すると表明
フィリピンを訪問したポンペオ米国務長官は1日、南シナ海でフィリピンの航空機や船舶が攻撃を受けた場合、比米相互防衛条約の条項に基づいて、米国が比を防衛すると表明した。条約の適用範囲をめぐって見直し論が浮上する中で、米政府首脳が防衛責務を明言するのは初めて。
ロイター通信によると、条約の改定作業については、公式協議に先立ってロレンサナ国防長官が今月、ワシントンを訪問、シャナハン新国防長官代行をはじめ国防総省幹部と会談、両国の防衛協力の在り方などをめぐり協議する。
ポンペオ長官は2月28日、米朝首脳会談を終えてベトナムのハノイからクラーク空軍基地に到着。同日夜、ドゥテルテ大統領と、1日午前にロクシン外務長官と相次いで会談した。
会談後、ロクシン長官と共同記者会見したポンペオ長官は、南シナ海で「航行の自由作戦」を展開する米軍に対し、中国が威嚇的行動を強めていると懸念を表明。比の航空機や船舶が外国から軍事攻撃を受けた場合は「南シナ海は太平洋の一部であり、米国は相互防衛条約第4条に従って、比を防衛する」と述べた。長官はこうした見解を、大統領はじめ比政府側に伝えたとみられる。
防衛条約をめぐってはロレンサナ長官が、南シナ海の島しょが適用範囲に含まれているかどうか明確でないとして、見直しを求めていた。改定作業は今月中にも開始されると伝えられる。
これに対し、ロクシン長官は1日の会見で、「条約のあいまいさが最大の抑止力であり、抑止力の古典的な理論だ」と述べ、条約の見直しは必要はないとの考えを表明、ロレンサナ長官と食い違いを見せた。
比米条約は、外国からの侵略や攻撃に対処する相互防衛のための安全保障条約で、1951年に締結された。有効期限は無期限。92年に駐留米軍が撤退した後も維持されている。条約第4条は、適用範囲を「太平洋地域」と規定している。(横山立)