最終和平へ鍵握るMNLF 和平プロセスへ復帰なるか
大統領がMNLFのミスアリ議長と会談、連邦制実現の遅れ謝罪か
ミンダナオ地方でのバンサモロ・イスラム自治政府(BARMM)創設は2回の住民投票を経て暫定統治機構(BTA)が2月末に正式に発足、チーフ・ミニスター(首相)代行にモロ・イスラム解放戦線(MILF)のムラド議長が就任した。しかし、長年にわたる政府との内戦の「もう一方の主役」だったモロ民族解放戦線(MNLF)は自治政府に非協力な姿勢を示している。ミンダナオの最終和平への道のりは、MNLFの今後の動向が大きな鍵を握りつつある。
ドゥテルテ大統領は26日夜、MNLFのミスアリ議長と大統領府で会談した。議長はアラブ首長国連邦(UAE)訪問に先立ち、首都圏入りしていた。
パネロ大統領報道官によると、15分ほどの会談中、大統領は議長に対し「以前に合意したことを実行できずにいることを謝罪した」という。
ミスアリ議長は、自治政府創設よりも、大統領が進めようとしている連邦制の早期実現を望んでいることを公言。BTAにも自身は加わらない意向を示していた。大統領の議長への謝罪は連邦制をめぐってとみられている。
報道官は、大統領と議長は「再度会う予定」だとした。ロレンサナ国防長官によると、大統領は議長のUAE訪問にあたって「政府特使」の肩書きを与えた。議長の帰国は3月20日の予定。
ミンダナオ地方における内戦の克服、最終和平にはMNLFとMILFの2大イスラム勢力の協力が必須とみられてきた。しかし、発足したBTAはMILFメンバーらを中心に構成されている。
MNLFがミンダナオ地方のスルー諸島に拠点を置くタウスグ人中心の組織であるのに対し、MILFはミンダナオ島マギンダナオ州などに拠点を置くマギンダナオ人中心の組織だ。「両派はマギンダナオ王国とスルー王国という別々の王国を形成してきた歴史があり、微妙な対抗意識が存在する」(床呂郁哉・東京外語大アジア・アフリカ言語文化研究所教授)という。
和平プロセスの主役から「外された」印象のあるMNLFのミスアリ議長をいかに説得、再び協力を取り付けられるか。ドゥテルテ大統領の手腕が問われている。(石山永一郎)