バンサモロ基本法、成立へ 秋に住民投票、領域確定
「イスラム教徒ミンダナオ自治地域におけるバンサモロ基本法」を両院委が承認。大統領の署名により23日に成立の見通し
イスラム教徒居住区に高度な自治を認めるバンサモロ基本法に関する両院委員会は18日夜、両院で可決された法案を統合した「イスラム教徒ミンダナオ自治地域におけるバンサモロ基本法」を承認した。ドゥテルテ大統領の署名により23日に成立、秋に予定される住民投票で領域などを確定し、2022年に自治政府が発足する見通し。
草案を起草したバンサモロ移行委員会(BTC)のジャファール委員長は承認後、「私たちは満足している。完璧ではないがきっと良い始まりになる」と歓迎の意向を表明、その重要性を強調した。ロケ大統領報道官は19日、「ドゥテルテ大統領は両院委員会に感謝している」と述べた。
両院委員会は9日から開かれていたが、BTCが一時難色を示し、審議は難航。懸案となっていた前文や住民投票のやり方を修正することで折り合った。
今後10〜12月にバンサモロ地域の領域を決める住民投票を行い、現在のイスラム教徒自治区(ARMM)からバンサモロ(モロの国)への移行を目指す。上院案を起草したズビリ上院議員は「22年5月の選挙に合わせてバンサモロ自治政府の総選挙を行うことになる」と語った。
ミンダナオ地方西部では長年、イスラム教徒が自治権拡大を求めて紛争を続けており、昨年5月には過激派組織「イスラム国」(IS)に忠誠を誓う過激派がマラウィ市を占拠、和平実現が急がれていた。
最大イスラム武装勢力、モロ・イスラム解放戦線(MILF)と比政府は14年に独自の予算編成権と一部の徴税権を持つバンサモロ自治政府の設立で合意、ミンダナオ地方での和平実現のため17年7月にBTCが大統領府に草案を提出した。
自治政府は首相(チーフミニスター)と議会、国家警察傘下のバンサモロ警察を持ち、税収の75%が自治政府に入り、残りの25%がフィリピン政府に入るほか、比政府の税収の5%が自治政府に無条件で交付される。
領域内のイスラム教徒にはコーランに基づくイスラム法(シャーリア)が適用される見込みだが、キリスト教徒などには原則として適用されない。
ドゥテルテ政権は共産勢力との和平も進めており、発展が遅れているミンダナオ地方の開発と発展を目指している。(森永亨)