大統領もバランスを
偏向報道発言
アキノ大統領はこのほど、民間報道機関の記念式典で、負の側面に偏った報道が多いと非難し、バランスの取れたニュース報道を求めた。メディア側は直ちに、報道内容を指示される必要はないと反論した。
明るい見出しの新聞と、暗い見出しの新聞が並んでいれば、人は当然、暗い見出しの新聞を買う。自分が不幸になる恐れがあるニュースをいち早く知り、身を守りたいという防衛本能が働くからだろう。そんなメディアの特性も勘案すると、大統領の苦言は受け入れられない。
大統領は、政府が報道機関に注文を付けるのではなく、情報を取捨選択して活用する能力を国民に付ける努力をすべきだ。その方が偏った報道への対策になる。
それに、大統領はメディアに物事の悪い面だけでなく、良い面も公平に報道すべきだと説教するなら、自らそうすべきだろう。先の施政方針演説で、今年第1四半期の高成長率を自賛したが、同時に貧困や飢餓、失業への不満が高まっていることを示す世論調査にも言及すべきである。
公平な報道を求めるなら、情報公開も大事だ。大統領には人口抑制法案と同様に、情報公開法案の成立にも力を入れてほしい。
大統領が就任した直後から、フィリピン国債の格付けが8段階も上がったとアキノ政権は自慢する。大手格付け会社はアロヨ前政権時代の財政改革が実を結んだ結果だと分析しており、大統領はそれにも触れるべきだ。
最後にもう一度、大統領に言っておきたい。報道機関に対し、偏った、根拠のない当てこすりを排して、バランスの取れた真実だけを報道するよう求めるのは、よろしい。しかし、自らもそうするのを忘れないように。(10日・タイムズ、リカルド・サルード氏)