比日双方に恩恵あり
大震災受けた工場移転
東日本大震災に見舞われた日本の窮状を利用しようとしているわけでは決してないが、日本産業界は今こそ、フィリピンを含めた海外への生産拠点移転をさらに進めるべきだろう。
大地震、大津波、原発事故という三重苦は日本の工業生産力を低下させた。さらに、復興への道筋がまだ見えない中、国民の消費意欲も低下。3月の新車販売台数は4割近く落ち込み、工場の操業を一時止める自動車メーカーも複数出た。
三重苦に追い打ちをかけたのは、原発事故に伴う電力の供給量不足。計画停電により生産量の落ちた電子産業は日本を支える基幹産業であり、日本経済全体への影響が懸念されている。日本経済の低迷や生産落ち込みが続けば、比も直接的な影響を受けるだろう。なぜなら、比にとって日本は最大の輸出先で、2010年は総輸出高78億ドルの15%を対日輸出が占めたからだ。
このような状況下、現政権は3月下旬、経済関係閣僚らを日本へ送ると発表した。日本の半導体、電子機器メーカーに、国内工場の一部を比へ移転させるよう促すためという。
この提案は比日両国を利するだろう。日本は、一部工場を国外へ移転させることで、海外生産拠点の拡大と大災害発生時のリスク低減を図ることができる。域内各国より労働力を安価に確保できる比では、生産コストを下げることも可能だ。他方、比側は海外からの投資増と国内雇用拡大という恩恵を受ける。また、日本企業のさらなる進出は、比に対する外国人投資家の信頼向上にもつながるだろう。
ただし、比への移転、投資を実現させるためには、優遇措置に加えて一貫性のある経済政策や公正な競争などビジネス環境の整備が必要となる。(4日、スタンダードトゥデー)