台風ヨランダ(30号)
国連、食料や安全な水の確保など緊急支援がまだ不十分と指摘。復興移行を強調する政府に警告
国連人道問題調整事務所(OCHA)は25日、台風ヨランダ(30号)被災者の支援活動に関する最新の報告を発表した。台風横断から2週間以上が経過した現在も、食料や安全な水、避難所、医療などさまざまな面で緊急支援がまだ十分でないと指摘。5歳未満の被災児童推定135万人が飢餓状態に陥っている危険性があるとし、緊急支援から復興段階に移行したと強調するフィリピン政府に警告を発した。
国連は、被災者は救援物資によってわずかな食料を手にしているが、①市場や商店が営業を再開していない②現金がない③市場への交通手段が限られている││などの理由で、今後も長期的な食料不足が続く恐れがあると説明。特に、東ビサヤ地域をはじめ被災地住民の大半が、農業に従事しており、貧しい小作農らが年明け1月までの作付け期間中に農業支援を受けられなければ、収穫期に現金収入が得られず困窮に陥り、生活を再建できなくなるとの見方を示した。
また、今後数カ月の感染症のまん延を防ぐためにも、栄養価の高い食事と安全な水の確保が必要と強調。各国の緊急医療支援チームが被災地を離れ始める中、地元の医療施設によるサービスはまだ十分に復旧していない現状を指摘した。特に、ビサヤ地方東サマール州の太平洋沿岸部とセブ州北部で医療サービスの不足が続いているという。
燃料不足も続いており、特に、東サマール州ギワン町の小島では、輸送難から支援が限られている。
さらに被災地での生活の難しさから、東ビサヤ地域から毎日推計5千人が首都圏やセブ州に避難している事態を重視。親や保護者と死別したり、離ればなれになってしまった子供たちも多く、身元特定と親や親類捜しの重要性も指摘した。
国連開発計画(UNDP)は、レイテ州タクロバン市、パロ町で被災者男女180人を雇用し、がれき撤去作業を始めている。
ロハス内務自治長官は21日、被災地は危機的状況を脱したとの見方を示した。対応の遅さが批判を受けている緊急支援から、復興に向けた歩みに移行したことを強調している。(大矢南)