台風ヨランダ(30号)
国連事務次長、救援活動の遅れに心痛表す。外国の輸送支援で迅速化を期待
台風ヨランダ(30号)により壊滅的な被害を受けたビサヤ地方レイテ州タクロバン市を視察したヴァレリー・エイモス国連事務次長(人道問題担当)は14日、首都圏マカティ市内で記者会見を開いた。救援活動が遅れ、被災後6日がたった現在も一部の被災地に物資が届いていないことに対し「政府、自治体と同様に心痛ともどかしさを感じている。今後48時間以内に状況が改善されることを願う」と述べた。輸送ラインの確保が大きな課題としつつも、幹線道の通行再開や外国政府による輸送機の支援などで、今後、救援活動が飛躍的に迅速化するだろうと期待を示した。
エイモス事務次長は、タクロバン市の様子について「完全に壊滅していた。住民は崩壊した家や建物に身を寄せ、風雨にさらされている」と説明。感染症などが広がる危険性もあり、安全な飲料水と衛生用品、医療、食料、避難所の確保が極めて重要だと述べた。
また、「被災者は何もない中で手を尽くし、少しでも正常さを保とうと努力していた。フィリピン人の回復力をこの目で見た」とも述べた。
救援活動の遅れについては、「物資の到着に時間がかかり過ぎ、被災者を落胆させている」と指摘した。
しかし、①今年だけでも多数の災害に見舞われている状況が、政府、自治体、国際機関の対応を困難にしている②事前に避難はしていたものの、高潮は予想外だった③がれきの山でタクロバン空港から市内に出るだけでも時間がかかるなど輸送・移動が困難④被災後の基本的ニーズに対応すべき自治体関係者も被災、死亡したり、家族を失っている⑤新たな熱帯低気圧の接近で天候上の制限があった——など救援活動が遅れた「十分な理由がある」と政府の対応を擁護した。
外国政府による輸送支援で、物流の改善が期待される一方、「空港から各地に陸路で物資を運ぶためのトラックが不足している。また、タクロバンには燃料は全くない状況だ」と話し、トラックと燃料の必要性を強調した。
さらに、国連としては、最も被害が深刻で被災者のおかれた状況が劣悪なタクロバン市を優先するが、「ほかの被災地を見過ごすことは決してしない」と確約した。
今週中にも、レイテ島以外の被災地、東サマール州ギウアン町、カピス州ロハス市、イロイロ市、ルソン地方パラワン州ブスアンガ町への被害調査チーム派遣を始める。
また、国連人道問題調整事務所のデビッド・カーデン比担当は「市街占拠事件があったミンダナオ地方サンボアンガ市、地震で被災したビサヤ地方ボホール州の被災者支援もまだ終わっていない。こちらの被災者のことも忘れないでほしい」と呼び掛けた。
報道陣からは復興に関する質問も出たが、エイモス事務次長は「今はまだ、緊急的なニーズを特定し、支援していく段階。復興計画を評価するのは時期尚早」との見方を示した。(大矢南)