社会課題解決に日比15社が集う スタートアップ企業ピッチイベント
マカティ市で22日、経産省と貿易産業省、JETROが共催したイベント「ジャパン-フィリピン・スタートアップ・ピッチ」が開催
首都圏マカティ市内のホテルで22日、日本の経済産業省(METI)と比貿易産業省(DTI)、日本貿易振興機構(JETRO)マニラ事務所が共催したイベント「ジャパン-フィリピン・スタートアップ・ピッチ」が開催された。同イベントはフィリピン・スタートアップ・ウィーク2023に合わせて開催。比が抱える社会課題の解決に取り組む比日のスタートアップ企業(新興企業)15社が事業やサービス内容をプレゼンし、参加した地方自治体や企業とのビジネスマッチングを促した。
各スタートアップ企業は災害対策や教育、ヘルスケア、交通、水産資源開発、農業、クリーンエネルギーの分野に分かれて、5分間のプレゼンを実施後、参加者らと交流した。
貿易産業省コンペティティブネス局のリリアン・サロンガ局長は開会の挨拶で「(同イベントについて)自治体と民間セクターのマッチングを促し、社会課題に立ち向かう力を養う画期的なプラットフォームになる」と強調。
経済産業省通商政策局の吉川徹志通商交渉官によると、今年3月に行われた比日産業協力対話を通じて同イベントの開催について議論が交わされた。吉川氏は日本と比をはじめとする東南アジア諸国連合(ASEAN)が共通する社会課題に直面しているとし、「スタートアップの力は必要不可欠」と強調。「今日のイベントが新たなパートナーシップやイノベーションの共創につながれば」と期待を込めた。
参加したスタートアップ日系企業は災害対策分野から「Spectee」、「Aster」、「MAMORU Japan」、「AeroSense」。教育分野で「learningBOX」、医療分野で「Any-Edge」と「Instalimb」、交通分野で「Zip Infrastructure」、水産資源開発分野で「OceanEyes」、農業分野で「Sagri」。他にも比のスタートアップ企業5社が参加した。
地震被害の要因のひとつとなっている組積造の耐震性を向上させ、施工性も良い耐震塗料を開発した「Aster」や自動操縦と長時間飛行できる能力を持つ国産ドローンを生産する「AeroSense」、3Dプリンターの技術を活用して義肢を製造する「Any-Edge」や渋滞緩和を念頭に自走式ロープウェイ交通システムを提供する「Zip Infrastructure」など独自開発された技術が際立つプレゼンが多く見受けられた。
オンライン学習管理システムを提供するlearningBOXの西村慎太郎営業部長は比進出について「教育プラットフォームに関して規制が厳格ではなく、人口が多く、教育課題のある比を選んだ」と明かした。組織内トレーニングや現場の教育、新入社員教育での活用事例が多く、すでに比においても語学学校で利用されているという。西村営業部長は「プレゼン後、すぐに比の企業の方2~3人からお声がけがあり、今後の展開が楽しみだ」と語った。
再生可能エネルギー事業を行う比企業「ダリ・イノベーションズ・アンド・テクノロジーズ」はコンパクトで施工性の良い風力発電システムをプレゼンで打ち出した。同社のホセ・ビリャロン技術責任担当によると、ミンドロ島で現在試験運用を行っているという。ビリャロン氏は「われわれはまだまだ初期段階で、市場価値が認知されていない。今後、マーケティングやシステム設置を拡げ、信用を上げていきたい」と話した。
学校やスタートアップ企業向けに科学技術開発に関するイベントを営むという比企業のジョンディー・ドプライナさんは「ネットワーク拡大を目的としてイベントに参加した。さまざまな比日企業と出会えた」と笑顔をみせた。(沼田康平)