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4月26日のまにら新聞から

「これからがスタート」 特定技能「介護」の研修施設開所

[ 1755字|2023.4.26|経済 (economy) ]

ラグナ州カランバ市で、特定技能「介護」で働くための国内初の本格的な研修施設の開所式

特定技能「介護」の研修施設でテープカットするNHRFIヒューマン・リソーシズのダニー・ナバロ社長(左から3人目)、パーペチュアルヘルプ大のアンソニー・タマヨ総長(同4人目)、グランソールジャパンの辻村敦史代表取締役(右から3人目)、グランソールジャパンの中谷公男取締役(右端)ら=21日、ラグナ州カランバ市のパーペチュアルヘルプ大カランバ校で岡田薫撮影

 パーペチュアルヘルプ・システム・ダルタ大のカランバ分校=ラグナ州カランバ市=で21日、特定技能「介護」として日本で働くフィリピン人のための、比初の本格的な民間研修施設の開所式が行われた。式典には在比日本国大使館や日系企業、大学関係者ら来賓、楽団なども含め約100人が参加した。

 同施設は、比を含む海外からの観光・医療、介護インバウンド、職業紹介などの事業を展開するグランソールジャパン株式会社が建設費を負担して学内に建設し、日本の介護器具なども導入されている。維持・管理などは同大が行う。

 同社の中谷公男取締役によると、日本での介護人材不足を補うため、同施設では6カ月間で日本語能力試験N4レベルまで高めるための日本語研修を行う。また、介護に必要な専門知識も日本語で教える。日本行きが決まった際は、渡日前にオンラインでのN3レベルの講習も実施するという。

 グランソールジャパンの辻村敦史代表取締役は式典に出席するため、前日に来比した。日本の現場に即した同施設建設のための渡比は十数回に及ぶ。辻村氏はまにら新聞に「コロナ禍で当初の計画の倍、4年もの年月をかけてようやく完成した。これからがスタートという気持ち。一方で、研修生をはじめ、日本の受け入れ側にも安心してもらうための課題や重圧もある」と心境を語った。また、介護福祉は「人材不足が顕著な業界。まずはここに集中し、日本の受け入れ側と良好な関係を培っていきたい」と話している。現在の施設は平屋だが、柱は6階建てまで耐えられる強度があり、将来的な増築も見据えた設計がされているという。

 ▽日本行きが比較的容易に

 1995年から日本全国に比人就労者を斡旋してきたNHRFIヒューマン・リソーシズのダニー・ナバロ社長は、日本で日本語を2年ほど学んだ経験を持つ。ナバロ社長によると、現在同施設で試験的に学ぶ研修生が8人がおり、うち日本語能力試験N4を取得して日本行きが決まっているのは2人。ただ「それほど難しいものではない。必要なのは技術教育技能開発局(TESDA)のNC2修了書と日本語のN4レベル、そして日本語で行われる技能試験への合格だ」と説明した。同社長は特定技能の利点を「元技能実習生であれば、試験なしで特定技能に切り替え、日本に留まることができる。これまで日本での元実習生は、より給料が高いオーストラリアやカナダ、欧州を目指す傾向があったが、日本に戻る人が増えている」と話す。

 ナバロ社長の日本側パートナーである特定技能登録支援機関「カインドサポート株式会社」の花形睦夫代表取締役によると、グランソールと同施設を通じて年間200人を日本に送り出すことを目標にしている。花形氏によると、医療系に強いパーペチュアルヘルプ大の卒業生が研修生となることを想定しており、「最終的には1度に100人に対し年2回の研修を実施する。本来は国家事業であるべきと考えるが、研修所を民間で作り、訓練して送り出そうというケースは初めてで、意義は大きい」と力を込めた。

 

 ▽先代から引き継ぎ

 パーペチュアルヘルプ大はラスピニャスの本校を含め全10校で、学生総数は1万8000人。うちカランバ校は学生数3600人で、分校としては最も新しい。同大のアンソニー・タマヨ総長は、「当校は親日的な大学だ」と笑った。タマヨ氏によると、同施設をめぐる事業は先代だった父親と辻本氏が始めた。「施設自体は大学に属すが、その代わりに大学として日本社会に貢献できる人材を育成する約束をグランソールと結んでいる」と明かし、「同時にそれは学生が将来生計を立てて行く手段ともなる」とも伝えた。

 奈良県内の介護施設で働くことが決まっているというアメリア・ルイスさんは試験研修の第1期生で、就労先が決まった第一号だ。夫は同校の警備員で、現在大学生と中学生になる娘2人も幼稚園から同校で学んできている。

 ルイスさんは「家族と離れることは寂しいが5年間の辛抱」と決心した。国際厚生事業団のウェブサイトによると、介護分野には特定技能2号は設けられていない。介護福祉士の国家資格を取得することにより、在留期間の更新や家族滞在が可能な在留資格「介護」に変更できる。(岡田薫)

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