政府債務 ASEANで唯一改善 高成長、財政赤字縮小で
ムーディーズ「アジア・大洋州地域で債務負担が減少するのは比、モルジブ、フィジー」
格付け大手ムーディーズは9日、アジア・大洋州地域で今年国家の債務負担が減少すると見込まれる国はフィリピン、モルジブ、フィジーの3カ国だと発表した。比は東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で唯一債務負担の改善が予想された国となった。
要因としてムーディーズは、高い名目国内総生産(GDP)の成長を指摘した。アジア開発銀行は2023年の比成長率をASEAN主要6カ国の中でベトナムに次いで高い6・0%と予想している。
ムーディーズはまた、比を含むアジア太平洋地域諸国について「債務の持続可能性と金融の安定性は他の地域に比べ地に足がついており、対外債務も概ね健全」と説明。「世界的なインフレ率上昇と金融引き締めにかかわらず安定し、他の地域をより良好になる」との見通しを示した。
一方で、比などの債務負担は「ピークを過ぎ、財政赤字幅は減少する可能性が高い」としながら、「大幅な債務削減の余地は限定的。債務負担はコロナ前には戻らず推移するだろう」と分析。比の22年9月末時点の債務残高対GDP比は、過去17年で最大の63・7%。コロナ禍前の2019年は39・6%だった。
比政府は今年の経済成長が6~7%になると見込み、累積債務残高対GDP比が60~62%に下がると予測。財政赤字対GDPについては22年の6・9%(推計値)から今年は6・1%に、現政権最終年の28年には3・0%に下げることを目標としている。
財務省は昨年、2021年時点で比の対外債務残高対GDP比は27・0%となり、ASEANで最も低い水準だと発表している。(竹下友章)