「日刊まにら新聞」ウェブ

1992年にマニラで創刊した「日刊まにら新聞」のウェブサイトです。フィリピン発のニュースを毎日配信しています。

マニラ
33度-25度
両替レート
1万円=P3,780
$100=P5880

12月28日のまにら新聞から

検証1「来年2月まで今の水準続く」 物価上昇で日々の食費削る

[ 2238字|2022.12.28|経済 (economy) ]

検証1・物価高騰でどのように家計をやり繰りしているのか、生活者の声を聞いた

ダゴノイ市場で野菜を売るジェイワード・クインテロイさん(右)=26日午後、首都圏マニラ市サンアンドレス地区で岡田薫撮影

 新型コロナやロシア・ウクライナ戦争が世界中で深刻な影響を及ぼしている。石油・天然ガス、穀物の価格高騰。フィリピンでも11月のインフレ率が過去14年間で最高水準の8%を記録し、首都圏10月の食料品価格上昇率は前月の8・6%から9・5%となった。物価上昇は食料品に留まらないが、庶民にとって日々の食費は切実な問題だ。どのように家計をやり繰りしているのか、首都圏のマニラ市、マカティ市、タギッグ市ボニファシオ・グローバル・シティー(BGC)の生活者の声を聞いた。

 マニラ市でトンドを凌(しの)ぐ人口密集地区とされるサンアンドレス。地区の台所の役割を担うダゴノイ市場では26日、赤玉ねぎが1キロ当たり480ペソで売られていた。

 市場内で野菜を売るジェイワード・クインテロイさん(29)は、小振りの玉ねぎ二つを30ペソに小分けして売っていた。「ディビソリアの仕入れ元が値上がったため、店頭でも上げざるを得ない」と説明。「昨年に比べ客も財布のヒモが固くなり、売り上げは落ちて、売れ残りも増えている」と苦境を訴える。ただ、クリスマス前の価格上昇については「伝統のようなもので一時的に需要が高まるため、どの店も値上げしていた」と明かした。

 クインテロイさんによると、現在トマトは同120(数カ月前は140~150)ペソ、ジャガイモは同140(80~90)ペソ、キャベツは120(150)ペソだ。ニンニクは同市場で100~120ペソの間で売られていた。

 数カ月前からやや下がってはいるが、高止まり感があり、地区住民にとっては厳しい状態が続く。

 同市場の肉コーナーではそれぞれ1キロ当たり豚肩ロース(カシム)320ペソ、豚バラ(リエンポ)380ペソ、骨付きばら肉(ブトブト)280ペソ。鳥肉210ペソ、骨付下もも肉と手羽先220ペソ、レバー240ペソ、鶏足160ペソで売られていた。クインテロイさんは、「1日計100キロ売れる。年末年始の行事が落ち着く来年2月までは同じ値段水準が続くだろう」と話した。

 ▽豚肉や野菜を減らし

 サンアンドレス地区に住むアドナマリー・アズルさん(30)は、コロナ以前は外国人観光客相手のカメラマンだった夫(34)と共働きで、4人の子どもを抱えても生活は安定していた。しかし、コロナ禍で夫は失職し、住み込みの広告設置業となり、日給537ペソ(現在の首都圏最低日給は570ペソ)に。アドナマリーさんも日系のたこ焼き店で働いていたが、現在は呼吸器系の疾患を患いながらの育児に専念している。

 家はバランガイ(最小行政区)警備員として夜間働く義父と2部屋をシェアし、共同トイレ1つを3家族がシェアする。室内のバケツで子どもたちが用を足す同じ部屋でティノランマノック(鶏のスープ)を作りながら、アドナマリーさんは「食費が1日600ペソもかかる。高価な豚肉や野菜が買えなくて、鶏肉や魚ばかり。ガス代節約で夜の分も昼に作り置きしている」と語った。

 以前と比べ、おむつは20ペソ、粉ミルクは30ペソ値上がった。交通費節約のため「買い物は徒歩圏内で、その分食材はやや高くなる。クリスマスにはルネタ公園でピクニックするのが精一杯だった。今ではジョリビーに行くことも難しい」と嘆いていた。

 ▽より安い市場へ

 マカティ市ピオデルピラールの月々4500ペソの部屋でパートナー(30)と暮らすジュン・デラクルスさん(34)は、市内の中華料理店で調理するかたわら、同店の食料買い出しも担っている。リベルタッド市場(パサイ市)に連日通うジュンさんは「近所の市場(マカティ)では1キロ140ペソのキャベツがパサイでは80ペソ」。「やや遠いが、ジプニーでも12ペソで行ける」

 デラクルスさんによると、ガロンゴン(アジの一種)はマカティでキロ当たり240ペソ、パサイでは160ペソ。豚バラ400ペソがパサイでは320ペソ、玉ねぎ580ペソがパサイで450ペソと比較してくれた。

 月収2万ペソで4千ペソを実家に仕送りしており、「クリスマスには1万ペソを送った」とデラクルスさん。パンガシナン州に子ども2人がいるパートナーはホテル従業員の月収1万6000ペソから、8千ペソを仕送りに。日々の食費は2人で200ペソに切り詰め、「昼の作り置きで夜も済ます」節約法だ。コメは「1キロ50ペソがおいしい」と笑った。

 ▽価格変動は常にあった

 大分県出身、海外生活30年を超えるBGC在住の松山道彦さんによると、昨年・一昨年と比べ、15%以上値上がりした品目がある一方、変わらないものも多い。「地場や比較的近隣から届く生鮮食料品には常に価格の上下変動があり、今は落ち着いた」印象がある。ただ「赤玉ねぎは著しく小さくなり、以前なら出荷に適さなかったものばかり」とし「SMアウラでは1キロ314ペソ以上の高水準で推移している」と話す。

 松山家では、食費が占める割合を示す「エンゲル係数がかなり高い。実費自体それほど変わらなくとも、家計内で家賃に次ぐ出費」。「遊興費はたまに行くゴルフの打ちっぱなしくらい」で、ほかを「削っているということはないが、貯金をするには難しい」と状況を明かした。

 一方で、BGC内のSMスーパーマーケットの「自社ブランドのSMボーナス製品が私たち庶民の心強い味方。ポイントカード利用ができるので便利」と話した。(岡田薫)

経済 (economy)