特別監査を中止 ドミンゲス財務相がBIRに命令 不動産業者など
ドミンゲス財務相は内国歳入庁に対し不動産開発業者などへのタスクフォースによる特別監査の実施を中止するよう命令した
ドミンゲス財務相は20日までに、内国歳入庁(BIR)に対し、不動産開発業者や直接販売業者、もしくはオンラインカジノ業者などに対する特別監査を実施するタスクフォースの活動を中止するよう命じた。同庁のマリッサ・カブレロス長官代行は同日、財務相の命令を受けて、BIRの歳入特別命令(RSO)と職務覚書(OМ)の執行を一時凍結した。22日の英字紙トリビューンなどが報じた。
BIRは17日、不動産開発大手メガワールドに対し、その特定の不動産物件の販売に関する監査結果を理由に閉鎖命令を通告。18日にはメディアを伴って閉鎖措置を実施することを発表するなどし、一時、不動産業界などに波紋が広がった。結局、メガワールド側が、BIRの監査に全面的に協力することを誓ったことで、閉鎖実施は見送られた。メガワールドはBIR地域事務所との間で「意見の相違」があったが、すでに「解決済み」であり、税申告漏れはないことを明らかにしていた。
ドミンゲス財務相は「BIRの様々なユニットの機能と責任は、長官の勧告により財務相が発行する通達に規定されている。RSOとOMの発行は、これを歪めて一部の納税者に不安さえ与えている」と指摘。その上で同相は、BIRに対してRSOとOMに基づくすべての監査と調査は、納税者が登録されている地域の歳入事務所またはユニットごとに、通常業務として処理されるべきとの注意喚起も行った。
下院歳入委員会のジョーイ・サルセダ委員長は20日、BIRが起こした「奇妙な」事件が「比の金融市場のみならず政府に対する冒涜(ぼうとく)でもある」と批判した。同委員長は「BIRは、インフレと高い対GDP債務比率という2つの脅威と同時に、新型コロナから生じた価格高騰から、われわれの財政的安定を保つために、非常に重要な役割を果たす必要があるからだ」と不快感を示した。サルセダ委員長は次期政権の下で、同委員会が徹底した調査を行うことを約束した。
米誌フォーブズの2022年世界の億万長者リストで、1096位(フィリピン3位)にランクインした実業家アンドリュー・タン氏率いるメガワールドは、1989年の創業以来、不動産開発や物件賃貸、マーケティングに携わってきた。96年にケソン市イーストウッド・シティーの開発をはじめ、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)を支援するオフィスビルの供給に重点を置いてきた。
メガワールドとその関連会社はこれまで、住宅725棟、オフィスタワー72棟、ライフスタイルモール24棟、コンドテルを含む12のホテルブランドを建設してきた。(岡田薫)