「契約管理が比インフラ最大の課題」 第5回省庁間インフラフォーラム
第5回省庁間インフラ旗艦プロジェクトフォーラム開催。次期政権でのインフラ投資継続を議論
首都圏タギッグ市の国際コンベンションセンターで27日、第5回省庁間インフラ旗艦プロジェクトフォーラムが開催された。記者会見にはサダイン公共事業道路次官など各省庁次官級、国際協力機構(JICA)フィリピン事務所の坂本威午所長、アジア開発銀行(ADB)のバード比国担当ディレクターが出席。現政権の大規模インフラ投資政策「ビルド(建設)、ビルド、ビルド」の成果や、次期政権における同政策の継続について質疑を交わした。
サダイン公共事業道路次官は「ビルド、ビルド、ビルド」の進捗(しんちょく)状況について、「119プロジェクトのうち12プロジェクトが既に終わり、31プロジェクトが23年に完工予定」と報告。
次期政権に委ねられる残り88プロジェクトについては「予算が承認されているものは完遂される」としながらも「いくつかは変更される可能性もある」とした。
一方、トレンド予算管理次官は、主要大統領候補者が「ビルド、ビルド、ビルド」を継承すると宣言していることに触れ、次期政権でも同プログラムは「継承される」との楽観的見通しを提示。
その上で、同プログラムを完遂するための課題として①契約履行の管理②関連機関が共同で行う計画・技術的作業の財務管理③道路用地の取得④借款の期限⑤組織構造の強化――を挙げた。
JICAの坂本所長は今後の開発協力に関し、民間セクターの重要性を強調。「インフラ投資政策は重要だが、公共部門だけでは全てをカバーできない」とし「民間企業をいかに誘致するかが重要」と指摘した。
さらに比のインフラ環境は世界141カ国中96位という世界経済フォーラムの調査結果を引用。同フォーラムは「インフラ整備が直接投資誘致にとって極めて重要と報告している」とした。
坂本所長はトレンド次官が指摘した課題のうち、一つ目の契約管理を「最重要課題」と指摘。「(比のインフラ開発プロジェクトに携わる)多くの日本企業が土地取得・引き渡しや支払いの遅延など、契約履行の遅れに苦しんでいることを率直に言わねばならない」と各次官に直言した。その上で「この問題が改善されれば一層日本の経済的資源を比に移転するべく政府を説得できる」とした。
また坂本所長は、政府開発援助(ODA)と官民連携事業(PPP)との関係について「この二つが対立関係にあるという考えは正確ではない」と指摘。「むしろ、PPPの促進のためにODAは重要な役割を演じる。例えばPPPをするにも民間企業は電気、水道や交通網が必要。インフラがあって始めて企業は投資の決断ができる」と述べ、民間活力を用いた経済開発のための基盤整備としてのODAインフラ整備事業の位置づけを強調した。(竹下友章)