接種は毎日並んだ順で ブランド告知は5秒前
本紙の石山記者がマニラ市でアストラゼネカ製ワクチンを接種
まにら新聞の石山永一郎記者(64)がこのほど比政府による英アストラゼネカ製のワクチン無料接種を受けた。申し込みから接種までの体験記を紹介する。
ワクチン接種にはためらいもあった。さまざまな副作用について聞いていたし、比人医師から処方され、新型コロナへの予防効果があるとされるイベルメクチンを5月から私は飲み続けている。イベルメクチンについては医学論文も読み込み「これを飲んでいれば十分」との思いもあった。
しかし、比政府はワクチン接種完了者に証明書を出し、持っていれば旅行の際にPCR検査を免除する動きもある。日本に一時帰国したり、比国内を移動するには接種は済ませておいた方が後々良さそうだ。
▽接種通知なかなか来ず
比人の妻(51)とともに自宅のあるマニラ市にネットを通じて接種を申し込んだのは4月。私は比では「高齢者」なので優先度は2番目のA2。既往症がある妻は3番目のA3だが、6月からA4まで接種者が広がった後も市からは何の通知もなかった。
調べると、マニラ市は接種日を個人に通知する方式をやめ、1日に10〜15カ所の接種会場を開設、希望者は都合の良い日にその会場に行く方式に変えていた。会場にはロビンソンプレースなど商業施設もあった。
最初に妻1人で7月のある日、午前10時ごろにロビンソンプレースに行ったが「全然遅かった。みな朝5時から並んでいる」とぐったりとして帰ってきた。12日、妻は午前5時に起きてその日の会場となった近所のバランガイホールに向かった。私も一緒に来るよう言われたが、新聞編集の仕事は昼すぎから深夜で、帰宅して眠るのは午前3時ごろ。「休みの日でないと無理」と妻だけを行かせた。
▽たたき起こされ会場に
しかし、午前8時過ぎに無事接種を終えて帰宅した妻に「今ならすいてる。すぐ接種してくれる」とたたき起こされた。
着替えながら「ところでワクチンは何だった?」と聞くと「アストラゼネカ」と言う。
比政府が5月までに入手した約250万回分のアストラゼネカ製ワクチンの使用期限は6月末で切れているので、8日に日本政府が比に供与した分が早速使われたようだ。
しかし、副反応の血栓などで欧州では死亡例が多数出ており、比に供与した日本は自分の国では公的接種を控えているいわく付きワクチンだ。しかも、ファイザー製やモデルナ製に比べて有効性も低いとされている。
「うーむ」とうなったが、結局、ワクチンの種別など全く気にしていない妻に手を引かれるように会場に向かった。
会場の体育館には20人ほどの比人がいたが、みな30〜50代と見えた。1人だけいた高齢のエンジニアの男性(60)は「仕事が忙しくてなかなか来られなかったが、家族に早く接種しろと言われてね」と苦笑いした。
受付のテーブルでプリントアウトした接種申し込み書を示し、健康状態など簡単な質問を受けると、すぐ接種だった。注射針を手にした看護師は左肩に刺す5秒前に「アストラゼネカです」とブランド名を告げたが、この段階で初めて聞いたとしてもまず拒否はできない。5秒後、左肩にチクリと痛みが走った。
▽不安は高脂血症
帰宅後、血栓が生じやすい人についてネットで調べると「高脂血症」とあってたじろいだ。最近の健康診断で血糖値とコレステロール値が高いと診断され、高脂血症の薬を渡されていたからだ。あわててしばらく飲まずにいた薬を2錠飲んだ。
アストラゼネカの副反応は接種後24時間以降に現れる。血栓のほか、接種部の痛み、倦怠感、頭痛、筋肉痛、発熱などだが、幸い今のところこれといった症状はない。
倦怠感はややある。ただ、年齢相応に日々感じる体のだるさの範囲のような気もする。2度目の接種はおそらく2〜3カ月後。アストラゼネカ製は間隔をおいて接種した方が効果が高まるという最近の研究結果があるためだ。(石山永一郎)