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3月7日のまにら新聞から

日本の実験から学ぼう 孤独担当大臣

[ 670字|2021.3.7|社会 (society)|新聞論調 ]

 日本の菅義偉首相は、2020年の自殺者数が11年ぶりに増加したことを受け、内閣に孤独・孤立問題を担う「孤独担当大臣」を加え、少子化対策や地域経済の活性化を担当している坂本哲司大臣を任命。「自殺者数は増加傾向にある。女性は特に孤独に苦しんでいる。問題点を洗い出し、総合的に政策を推進してほしい」と語った。

 日本の自殺対策はこれまでも進められてきたが、昨年の自殺者数は増加に転じた。厚生労働省によると、 新型コロナウイルスによる死者が3460人だったのに対し、自殺者数は2万19人。原因は49%が精神的・肉体的な健康の問題、次いで生活苦や多重債務などの経済・生活問題が17%、家庭問題が15%、仕事の問題が4%だった。コロナ禍は、これらすべての問題の重要な要因であったに違いない。日本以外の国の自殺率には日本ほどの影響はなかったようだ。

  世界保健機関(WHO)の報告書によると、フィリピンのWHO事務所には20年3〜5月の間、1日に30〜35件のうつ病の症例を報告する電話がかかってきていたという。しかし、自殺に向かう進行は見られかった。自殺を死に値する罪と非難するカトリック教会が比人に強い影響力を持っていることが大きく影響しているはずだ。

 「孤独担当大臣」という肩書は異例かもしれないが、日本の首相が自殺率の急上昇の根本原因と考えている国民の孤立・孤独感の増大に真っ向から向き合うものだ。比は社会的・宗教的背景から自殺率は低いかもしれない。だが、日本の実験を見続けていると、何かを学ぶことができる。(1日・マニラブレティン)

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