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2月14日のまにら新聞から

歴史踏まえダバオをアピール サラ氏の印象「気さくな人」 三輪芳明・駐ダバオ日本総領事

[ 1800字|2019.2.14|社会 (society) ]

ダバオ市の三輪芳明・在ダバオ日本総領事にインタビューをした

三輪芳明・駐ダバオ総領事=ダバオにて1月、石山永一郎撮影

 ミンダナオ地方ダバオの日本領事事務所が1月1日から総領事館に格上げされた。2月9日から11日にかけては河野太郎外相がダバオを訪問して総領事館開設式典に出席、比日外相会談も行った。ダバオには麻農園経営を中心とした移民が戦前から暮らした長い日本人社会の歴史がある。三輪芳明総領事に総領事館の役割と今後の展望について聞いた。(聞き手は編集長 石山永一郎)

 ーダバオ赴任前の主なお仕事は。

 「在フィンランド大使館に勤務、語学も含めて専門はフィンランドなので、ダバオと言われた時はさすがに驚いたが、当時でもダバオと日本との歴史的関わりについては多少知っていた。フィンランドと比べると暑い所に来たことになるが、在イラク大使館勤務も経験し、50度の暑さも知っている。それに比べれば、酷暑というほどでもない。ダバオだけでなく、ミンダナオ各地を回って当地の事情を楽しく学ばせてもらっている」

 ー総領事館格上げの背景は。

 「ダバオは戦前からの日本人移民の歴史を持つ町。実際に今も日本人の血を引く人は多い。この地で要職に就く日系人も少なくない。歴史的背景に加え、近年、ダバオに住む日本人は増加傾向にあり、周辺地域を含めて現在約1100人に上っている。ミンダナオ全体では約1800人。ダバオの将来性も重要と考えている。ダバオは、比、インドネシア、マレーシア、ブルネイの4カ国による地域協力『東ASEAN成長地域』(BIMPーEAGA)のハブとして発展していくはずだ。また、ドゥテルテ大統領の地盤で、娘のサラさんが市長を務めておられることも重要だ」

 ーダバオに総領事館を置いている国は。

 「中国が昨年10月に開設し、王毅外相がダバオにやって来た。中国なりの政治的思惑もあるのだと思うが、中国総領事とは仲良く付き合わせてもらっている。他はマレーシアとインドネシアだけで、米国も領事館を置いていない」

 ーサラ市長をめぐっては2022年の次期大統領選への出馬もささやかれている。印象は。

 「とても気さくで茶目っ気もある方だ。昨年末、クリスマスのライトアップのセレモニーを見に行った。招待されたわけではなかったが、私の姿を見つけると笑顔になり、自ら椅子を探してきて席に座らせてくれた。市長には邦人の安全確保などを日頃からお願いしているが、ダバオはミンダナオ地方全域を対象とした戒厳令下にあるとはいえ、多くの人が治安面の不安はマニラと比べても小さいと言っている。交通渋滞も増大しているようだが、暮らしやすく、働きやすい地だと思う」

 ー日系企業の投資状況はどうか。戒厳令下では外国投資誘致も難しいと思うが。

 「ミンダナオへの日系進出企業としては伝統的にはバナナプランテーションなどのアグリビジネスが主流だったが、最近のダバオには比人の英語力などに着目したIT関係企業の進出が見られることに注目している。『ミンダナオ日本人商工会議所』もダバオにある。カガヤンデオロにはピリピナス花王、JFEスティール(旧川崎製鉄など)、ブトゥアンでは近年、長大が様々なプロジェクトを展開している。戒厳令が必要でなくなることを私も願ってはいるが、現状は軍、警察とも必要と判断しているようだ」

 ーイスラム自治政府の今後については。

 「日本も和平に長年関与してきた地域であり、自治政府の発足で安定的な自治の枠組みが軌道に乗ることを願っている。ミンダナオ西部は農業資源だけでなく天然ガスなどの資源も豊富。和平によって資源開発を含む経済発展が進むことを期待している」

 ー当面の総領事館としての課題、イベントなどは。

 「日系3世、4世の就籍(日本国籍取得)の支援は今後も続ける。ダバオに日本人会ができたのは1918年。領事館ができたのは1920年。その間の年から100年に当たる今年を『ダバオ日本人コミュティー100年』の記念年とし、10月には日系人会ら関係団体と日本紹介行事やビジネスセミナーの開催を予定している。歴史を踏まえてダバオをアピールしていきたい」

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 みわ・よしあき 1958年生まれ。2016年まで在フィインランド日本大使館に3回勤務。この間、08〜10年、在イラク日本大使館勤務。18年3月にダバオ領事館事務所に着任。19年1月の総領事館への格上げとともに現職。趣味は読書。

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