マニラ湾「遊泳可能目指す」 年内目標に本格浄化実施
シマツ環境天然資源長官がマニラ湾浄化事業の本格実施を表明。年内の遊泳可能目指す
シマツ環境天然資源長官は11日、声明を発表し、1月下旬からマニラ湾の水質改善事業を本格的に実施し、下水処理施設の設置義務を徹底させるなどして年内に同湾の海水内の大腸菌数を「水泳ができるレベルまで引き下げる」との決意を示した。ビサヤ地方の観光地ボラカイ島で実施した6カ月間の閉鎖命令に伴う水質改善事業のような「大胆な環境政策」をマニラ湾でも行うとしているが、同湾の汚染状況はボラカイよりはるかに深刻。短期間でどこまで改善できるかは不透明だ。
13日付け英字紙インクワイアラーなどによると、ドゥテルテ大統領は
このほど、シマツ長官とアニョ内務自治長官に対してマニラ湾の水質改善事業実施をあらためて指示。大統領は8日にも首都圏パサイ市で講演した際、「マニラ湾沿いのホテルで下水処理施設を持たないホテルは閉鎖させる」と言明している。
環境天然資源省は同湾沿いで営業するホテルやレストランなど商業施設の下水処理施設の設置状況について今月27日から立ち入り検査するという。
シマツ長官によると、浄化作戦は「マニラ・ベイ・アクション・プラン」と呼ばれ、470億ペソの予算が割り当てられる見込み。実施主体には同省のほかに、比沿岸警備隊、国家警察、比港湾庁、首都圏開発局、マニラ水道下水機構なども加わる。
マニラ湾における水質調査によると、現在の大腸菌群数は330MPN(最確数)を記録しており、水泳やダイビングなどに適しているとされる水質レベル(100MPN以下)を3倍も上回っている。同省は当初、これを270MPN以下まで改善させるとの目標値を示していたが、一気に年内100MPN以下を目指すことになった。
レガルダ上院議員らが創設した環境政党「ルンティアン・ピリピナス」の政党リスト制の下院立候補者であるマイケル・ウバク氏は13日、この浄化作戦を評価しつつ対策の困難さも指摘した。同氏によると、ホテルや商業施設の汚水垂れ流しに加え、マニラ湾岸地域では毎日1500トンのゴミが不法投棄されているほか、家庭や工場から出る排水もそのまま同湾に流れ込んでいるという。
また、国際環境保護団体グリーンピースなどの調査によると、マニラ湾に集まるゴミの7割は処理が難しいプラスチックゴミとの結果も出ている。
マニラ湾の水質問題については2009年に最高裁が政府や自治体に対し水質改善を命じる判決を出しているが、これまでまったく具体的な対応がなされてこなかった。(澤田公伸)