総額30億ドル投資計画に懸案も 日本企業10社と貿産相が協議
日本企業10社と貿易産業相がオンライン協議。総額30億ドルの投資計画に懸案
フィリピンに投資する日本の大手製造企業10社は、ロペス貿易産業相とのオンライン会議で、新規事業や拡張事業など総額30億ドルの比への新たな投資を検討していることを明らかにした。一方で、大手10社は、コロナ禍における渡航ビザ発給やワクチン供給の遅れ、規制当局からの許認可手続き、付加価値税(VAT)を含む追加課税問題、さらに再生可能エネルギー利用への切り替えなどに対する懸念なども表明され、投資計画に影響が出るとの見方も出された。16日付英字紙ビジネスミラーが報じた。
同相との協議に出席したのはプリンター大手のブラザーやキヤノン、セイコーエプソンをはじめ、医療機器メーカー大手のテルモとジェイ・エム・エス、半導体・電子部品大手のロームと日本電産、ミネベアミツミ、イビデン、村田製作所の10社。いずれも業界を代表する大手企業で在日フィリピン大使館のマタイ商務担当官の調整と司会で会議が進められた。
参加した企業側は、他の東南アジア諸国の一部政府が提供しているのと同様の迅速なビザの発給や緩和された隔離措置を課すグリーンレーン(エクスプレスレーン)の実施や日比の従業員への早急なコロナワクチンの接種拡大などを求めたほか、追加課税問題や厳格なコロナ防疫措置による生産・納品スケジュールの遅れや収益への悪影響に対する懸念も出された。
さらに比国内3カ所に製造拠点を持ち従業員2万3千人以上を抱えるある大手企業は、顧客企業から2023年までに製造拠点の電力供給源を100%再生可能エネルギーに切り替えることを要求されているとして、比政府に支援を求めた。
会議で出た懸念に対して、ロペス貿易産業相は「これらの問題については政府全体で対処するアプローチを取るため、関係省庁などとすでに協議を始めている」と答え、比への投資計画が実現できるよう支援する意向を示した。同相は「日本との経済関係強化に努めている」とした上で、日本の研究開発機関や医療機器、電子部品やプリンターなどの製造拠点として比は最適だとの自信も示した。(澤田公伸)