「ミンダナオ共和国」独立目指す ドゥテルテ氏らが運動開始
ドゥテルテ前大統領が「ミンダナオ共和国」の分離独立に向けた運動の開始を宣言
ドゥテルテ前大統領はこのほど、「ミンダナオ共和国」の分離独立に向けた署名活動を開始すると発表した。前政権期に下院議長としてドゥテルテ氏を支えたパンタレオン・アルバレス現下院議員(北ダバオ州第1選挙区)が運動の指導を一任された。「平和的ミンダナオ独立主義者」のアルバレス氏は、国連に従ってシンガポールをモデルとした分離独立を構想しているという。
突然の分離独立運動には、国際刑事裁判所(ICC)への復帰や改憲方法を巡って対立を深めるマルコス大統領・ロムアルデス下院議長体制へのけん制の意図がありそうだ。
「この運動の唯一の理由は国民の血税が疑惑のある目的に使用されていることに心底失望しているからだ」というドゥテルテ氏。自身が主導した「麻薬戦争」下の超法規的殺害について国際刑事裁判所(ICC)が訴追に向けた捜査を続けていることとの関連については「ミンダナオ共和国が独立すれば、ICCは入れなくなる。アルバレスが私を匿うからだ」と、もう一つの意図を率直に述べた。
▽憲法上不可能
ザビエル大法律支援センター所長のアーネスト・ネリ弁護士はANCニュースのインタビューで、「法律的には国内の地域が共和国からの分離を宣言することは許されない。これは共和国の秩序に対する犯罪となる」と指摘。
フィリピン大法学部のマイケル・ティウ教授(弁護士)は「分離独立は極めて例外的な事象。それをする前に国との合意が必要だ」「現行憲法の枠組みでは法律上不可能だ」と同様に否定的な見解を示した。その上で「厳密には分離独立というのは武力が伴う。署名集めの段階では分離独立活動とまではいわない」とした。
この動きにコメントを求められたズビリ上院議長は、「混沌と分断はわが国が一番望んでいないことだと思う」と発言。一方、北スリガオ州2区選出のロバート・バルベルス下院議員は「ミンダナオの独立は簡単ではないが、実現した場合のミンダナオ住民への利益を検討する価値はある」と一定の理解を示した。(竹下友章)