弾劾裁判の開廷権を有する下院は5日、サラ副大統領に対する弾劾裁判の開始を求める動議を賛成215票で採択した。必要とされる下院議員の3分の1(102票)の賛同を大きく超えた。副大統領が弾劾裁判にかけられるのは初。
弾劾理由は①マルコス大統領夫妻およびロムアルデス下院議長に対する「暗殺」の企図②計6億ペソを超える副大統領室および教育省の機密費不正使用③説明されていない個人資産の存在④超法規的殺害への関与⑤政情不安定化への関与ーーなど。
サラ氏の弾劾訴状は昨年末に3件提出されていたが、下院議員がその3件を総合した4件目の弾劾訴状を提出。200議員以上の署名が入った同訴状の筆頭だったのは、大統領の長男のサンドロ・マルコス下院与党院内副総務だった。サラ氏への「政治的攻撃」の裏にいると指摘されているロムアルデス下院議長は、動議採択の際「これは憲法を順守し、いかなる政府高官も法を超えないようにするための行動だ」と宣言した。下院はまた、検察官役として11議員を選出した。
憲法11条は下院で弾劾が承認された後は上院が直ちに裁判手続きを開始すると定める。弾劾裁判では上院議員が裁判官となり、エスクデロ上院議長が裁判長となる。裁判官となる上院議員のうち3分の2が有罪とみなせばサラ氏は罷免または解職される。解職・罷免された後は刑事事件の対象ともなる。
国会は8日から休会するが、ベラスコ下院事務局長は「休会中でも立法機能のない弾劾裁判は開廷可能だ」としている。
▽王朝の終わりの始まり
同日、最初の弾劾状を提出した社民主義政党アクバヤンは声明を発表。「ドゥテルテ王朝の権力、不処罰、略奪の終わりの始まりだ」と歓迎した。その上で、「上院議員が憲法上の義務を守るのか、それとも政治的な『ご都合』に任せて正義を阻むのかが問われている」と上院の責任を強調した。
一方、サラ氏の兄のパオロ・ドゥテルテ下院議員も声明を発表。「一部の議員らが急いで署名を集め、根拠のない弾劾訴訟の即時承認を迫るという悪質な策略は、明らかに政治的迫害行為。現政権は危険な領域に踏み込んでいる」と非難した。(竹下友章)