首都圏3者間地域賃金生産性委員会(RTWPB)は6月29日、首都圏での1日あたり50ペソの最低賃金引き上げ条項を承認した。
労働雇用省(DOLE)のラグエスマ大臣は、7月18日に発効予定の賃金引き上げを承認したと発表し、「首都圏賃金委員会は、2025年に予定されている地域最低賃金の引き上げの中で、賃上げを最初に認めた。同委員会は満場一致で承認し、引き上げ幅もこれまでで最大の水準だ」と指摘した。前回最低賃金が引き上げられたのは2024年7月。
首都圏賃金委員会の賃金命令第26号により、首都圏の最低賃金は、非農業部門で645ペソから695ペソに、農業部門、15人以下の労働者を雇用するサービス業および小売業、また常時10人未満の労働者を雇用する製造業では608ペソから658ペソに引き上げられる。
同委員会は続けて、首都圏のインフレ率が今年5月に1・7%に緩和した一方で、今年4月時点の最新失業率は5・1%であったと指摘。
一方、5月22日には合計8件の賃金請願が提出されており、いずれも555ペソの賃上げを求めている。「最低賃金の引き上げ額を決定する際の賃金委員会の役割は、不当に低い賃金から保護されるべき労働者の権利と、適正な利益を得るべき経営陣の権利、そして雇用と生産性を促進し、インフレを防ぐという全体的な開発目標とのバランスを取ることだ」とラグエスマ大臣は説明した。
今回の賃上げ命令により、首都圏の最低賃金労働者約120万人が直接恩恵を受けると予想される。さらに最低賃金以上の収入を得ている170万人のフルタイム賃金・給与労働者は、各企業の賃金調整から間接的に恩恵を受けるとみられる。
常時10人以下の従業員を雇用する全ての小売・サービス施設、および自然災害や人為的災害の影響を受けた企業は、賃上げの免除を申請できる。
一方、労働業界は、この50ペソの賃上げに「バケツに一滴垂らしたほどにすぎない」と憤慨している。労働者団体「パルティド・マンガガワ」の党首は、「新たな最低賃金は首都圏の生活費の高騰に対して全く不十分。この引き上げは労働者が直面する貧困にほとんど影響を与えない。」と述べた。
進歩派労働団体「フィリピン進歩労働同盟(SENTRO)」は、この賃金引き上げを第19回議会で法定賃金引き上げが可決されなかったことを受けて、労働業界をなだめることを目的とした形だけのものだ。」と主張した。
また、フィリピン進歩労働同盟(NAGKAISA)は「RTWPBに継続的に依存するのではなく、政府が法律による賃上げを可決する方が望ましい。段階的な賃上げでは不十分で、200ペソの法定賃上げを緊急の課題として認定すべき。」と述べた。
急進的労働組合団体の「五月一日運動」(KMU)は、「全国の労働組合や団体は、適切な賃金条項が承認されるまで数百万人の労働者に働きかけ、全ての労働者の生活賃金の実現に向けて闘うよう呼びかけるため、キャンペーンや抗議活動を強化することを誓う。」と主張した。(新谷遼華)