首都圏ケソン市国軍司令本部(キャンプ・アギナルド)で21日、40回目となる比米合同軍事演習「バリカタン」の開始式が開かれた。
今年のバリカタンでは、これまでオブザーバーや人道支援訓練のみの参加だった自衛隊が、初めて正式に参加する。海上自衛隊はもがみ型護衛艦「やはぎ」(133メートル)を投入し、比米海軍とルソン島沖の排他的経済水域(EEZ)で合同航行などを実施する。比海軍は哨戒艦「グレゴリオデルピラール」(115メートル)および「ラモナルカラス」(同)、米海軍は軽巡洋艦「サバンナ」(180メートル)および揚陸艦「コムストック」(186メートル)を投入。米沿岸警備隊も参加する予定だ。
▽フルスケールの戦闘試験
国軍によると、今年のバリカタンでは「相互防衛構想計画の一部として、フルスケールの戦闘のシナリオを包括的に実施」し、陸・空・海・宇宙・サイバーの全領域で比の領土を防衛するための比米の相互運用性のテストを行う。比国軍バリカタン担当のフランシスコ・ロレンソ少将は開始式後の会見で、訓練の目的について「侵略を撃退し、抑止することだ」と明言した。
今年のバリカタンには、中国の接近阻止・領域拒否(A2/AD)への対抗のために開発された米海兵隊の無人地対艦ミサイル搭載車両「ネメシス」が初めて投入される。会見でバリカタンの米軍側責任者のジェームズ・グリン中将は、「同システム(ネメシス)を運用する第3海兵沿岸連隊は演習の後も国内に残り、出国するのは今年の後半になるだろう」と述べた。
米海兵隊の発表によると、ネメシスはルソン地方北部からバタネス州の島々に空輸され、両国の海兵隊が「遠征前進基地」を設置する。実弾訓練は行わないが、射撃シミュレーションを実施する。
会見で、「『フルスケールの戦闘シナリオ』には、中国による台湾侵攻も含まれているか」との質問にグリン中将は「この訓練はいかなる挑発も意図しておらず、ノーと言いたい」とする一方、「全面戦闘試験は、南シナ海問題をはじめとして、われわれが今日直面する全ての地域の安全保障上の困難を考慮に入れている」とし、中国が圧力を強める南シナ海問題への対応としての側面を強調。比米防衛協力強化協定(EDCA)に定められた米軍利用可能施設も「(演習に)関係する」とした。
今年のバリカタンにはオブザーバー含めて20カ国が参加予定。12カ国だった一昨年、14カ国だった前年より参加国が拡大した。一方で、参加人数は1万4000人超で、過去最大規模の約1万7000人に上った昨年および一昨年に比べ少なくなる見込みだ。(竹下友章)