ロムアルデス駐米大使は3日、外国人特派員協会(FOCAP)の年次フォーラムで、第2次トランプ政権誕生により予測不能性を増している対米関係について見通しを示した。同大使は、2月28日のウクライナのゼレンスキー大統領とトランプ氏との会談で口論が激化し、予定された合意が見送られるという前代未聞の事態が発生したことに触れ、「トランプ氏が取った行動は、明らかにわれわれ、または世界にとって困難なものだ」と発言。「現政権の行動原理は『アメリカ・ファースト』(米国第一主義)。両国関係は比だけでなく、米国に利益のある関係である必要がある」と指摘した。また「ルビオ国務長官などのインタビューを検討すると、米国にはウクライナへの支援を終わらせたいという意向があり、われわれもそれに備えなければいけない」とし、自衛力の強化、自国資源の投入による経済安全保障の強化、および東南アジア諸国連合(ASEAN)のこれまで以上の団結の必要性を強調した。
一方で、①米国による南シナ海での航行・上空飛行の自由作戦②比米防衛協力強化協定(EDCA)に基づく米国による米軍利用可能施設の整備③バイデン政権下で決定した対外軍事融資(FMF)を通じた5億ドル規模の比軍近代化協力――の三つについては「継続される」との見通しを提示。トランプ氏は就任直後の1月、ほぼ全ての対外援助を90日間凍結する措置を取ったが、5億ドルの対比FMFについて「3億3600万ドルが凍結の対象外となったと発表された」と改めて確認し、「残りの部分も検討の後に認められ、近く全額が供与される見込みだ」とした。
さらに、「(対比FMF法を推進した)ハガティ上院議員は比国軍近代化のために今後4~5年で25億ドルの資金を提供したいとの方針を表明した」と説明。「われわれはインド太平洋地域における自由と透明性を確保するための最前線に立っているため、こうした協力は米国にとっても利益がある」とした。
また、 「トランプ氏はイスラエルや日本など複数国の首脳と会談している」とした上で、 マルコス大統領とトランプ氏の首脳会談の時期について、「今年の春頃に会談するというアイデアもある」と発言。具体的な月については、「時期を固定したくない」と回答を避けながら、「マルコス大統領も選挙で忙しくなっているが、トランプ大統領の都合のいいタイミングでワシントンに必ず行くと明言している」と述べた。
さらに「トランプ氏は個人的なつながりを重視する」と指摘。「マルコス大統領との会談は米国による継続的な比米関係の支援と、同国のインド太平洋地域でのプレゼンスを継続するために重要だ」と強調した。
台湾有事に関する質問には「テオドロ国防相に委ねたい」と回答を避ける一方、南シナ海については「これまでの小競り合いの発生をみると、同海が『フラッシュポイント』(紛争の火種)であることは明白だ」と明言した。 (竹下友章)