日本語予備教育の対面研修開始 55人の看護師・介護福祉士候補者
55人の比国看護師・介護福祉士候補者が参加して第17期日本語予備教育の対面研修が開始
首都圏マニラ市の財団法人日本語センターで15日、日比経済連携協定(JPEPA)に基づいた外国人看護師・介護福祉士候補者に対する日本語予備教育の「対面研修」が開始された。同教育事業は第17期として昨年11月6日から基本的にオンライン形式で行われてきたが、同日本語センターでの対面形式での授業は初めて。
第17期生は比全国から選ばれた238人(211人が介護福祉士、27人が看護師)。今回の対面研修は238人のうち、国内の北はベンゲット州から、南は北サンボアンガまで、55人が選抜されて参加している。本研修は訪日前6ヶ月間研修(本年5月22日まで)に位置づけられ、日本語のほか、日本社会の規範や文化についても学習する。その後、日本に渡航してからさらに6カ月間の研修を修了し、本年末にはそれぞれが指定の病院や介護施設に派遣される予定。また、日本で看護師や介護福祉士の国家試験に合格した場合は、EPAプログラムの派遣期間終了後も日本で就労する資格を得ることができる。
同日の対面研修の開始に際して、国際交流基金マニラ日本文化センターの鈴木勉所長と在比日本国大使館の鈴木勇紀一等書記官が候補者たちの激励のために、4つの教室「さくら」、「うみ」、「ふるさと」、「ふじのやま」(すべて日本の童謡名)を巡った。鈴木所長は各教室の候補者に対して、「(それぞれの出身を問いかけた後)故郷の家族から離れて困難も多いと思う。今回の直接のつながりを大切にして、寮や教室で皆と一致協力して多くのことを学び、日本に行ってほしい」と激励した。
鈴木書記官も「現在の日本は高齢化社会という困難な局面にあり皆さんの力がとても必要。日本語を学ぶのは難しいと思うが、くじけずにぜひプログラムをやり遂げ日本で活躍して欲しい」と力づけた。鈴木所長らが激励中、教室「ふじのやま」では日本語教師の松島滋(まつしましげる)さんがさっそく候補生たちに講義で熱弁を振るっていた。内容は「場所から場所への移動方法」などについてだった。
対面研修を前に同日本文化センター日本語上級専門家の早川直子さんは「(今回の研修の詳細を示しながら)対面研修に参加した者同士で励まし合って能力を高め合ってほしい。研修は厳しいものとなるが、いつものことながら、終了したときには仲間同士で感涙にむせぶことになるでしょう」と候補者たちに期待を寄せていた。
候補者のジーナレイナ・ローズさん(女性、介護福祉士候補 30歳代)は「私の友人も研修に参加して日本で介護士になった。友人のように試験に合格して介護士になりたい」と述べた。また、コリアマリー・ドニーン(女性、看護師候補、40歳代)さんは「私の親戚には日本人がいたので幼いときから日本語と日本文化に興味がった。もちろん仕事を頑張るが日本に行ってまずファミチキと美味しい刺身を食べたい。」と語った。また、クリスティーン・ソソプラードさん(女性、介護福祉士候補、30歳代)は「日本に行けたら仕事も頑張るが、有名な観光地に行ってみたい」と豊富を述べた。一方で3人ともに口を揃えて、「比の家族と日本のために最後まで頑張る」と力強く語った。
▽日比経済連携協定に基づく受け入れ
厚生労働省によると、看護師・介護福祉士候補者の受け入れを含む日比経済連携協定は2008年12月に発効された。同協定に基づく比人看護師・介護福祉候補者の受け入れは、日・インドネシア経済連携協定に基づくインドネシア人看護師・介護福祉士候補者の受け入れとほぼ同じ枠組みとなっている。日比経済連携協定には、病院または介護施設で就労・研修を行って看護師・介護福祉士試験に合格して同資格の取得を目指すコース(就労コース)に加えて、介護福祉士養成施設で就学し介護福祉士資格の取得を目指すコース(就学コース)が設けられている(就学コースは2011年度以降、募集を行っていない)。フィリピン人・インドネシア人・ベトナム人について、外交上の配慮として、一定の条件で特例的な在留期間延長を認め、候補者に日本での就労・研修を継続しながら追加的な国家試験の受験機会を提供することと定められている。(萩原裕之)