首都圏マカティ市の邦人向け飲食店が集まるクリークサイドのカラオケバーで27日午後、同区域に立地するバー・飲食店などの事業者と、同区域を管轄する国家警察第3マカティ分署との間で、防犯・治安改善に向けた連携に関する会合が開かれた。昨年10月以来、マカティ市を中心に続発した邦人を標的とする拳銃強盗事件の影響で邦人客が激減していることを受け、リトル東京に立地するバー・飲食店が連帯して、警察・バランガイ(最小行政区)と連携し、防犯・安全確保を行う体制の構築を狙う。2月にも正式に新組織を発足させる予定だ。本格的に機能すれば、在留邦人の交歓の場ともなっている同地区の劇的な治安回復も期待される。
同会合参加者で12年以上バーを経営するチョロ・サンティアゴさんによると、日本人向けバーが多いマカティ市には90年代中盤にも同様の目的で事業者団体が立ち上げられたが、中核会員企業の閉業に伴って2000年代中盤に解散している。
新団体が発足すれば、約20年ぶりに同市で日本人を主な客層とする飲食店による治安改善団体の立ち上げとなる。まずは、リトル東京のあるバランガイ(最少行政区)ピオデルピラールに立地する店舗間で横のつながりを構築し、警察・バランガイと連携を進める計画だ。
呼びかけ人は、マニラ市マラテ地区で地区警察・バランガイと連携して治安維持活動を10年以上にわたり続ける同業者団体「MACRO」の副代表も務める、クリス・ウーンさん(娯楽業経営)。一昨年にクリークサイドに拠点を移したが、昨年10月以来の強盗事件続発を受け、一念発起。昨年12月に同地区の事業者、警察を交え会合を初開催した。マカティ署および第3分署と連携を取りながら組織発足のための準備を進めている。
▽顧客が80%減少
リトル東京周辺で12年以上にわたりバーを経営してきたチェロ・サンティアゴさんは、「強盗事件が発生し、日本大使館がその情報を在留邦人に伝えて以降、売上は75%~80%減少した」と窮状を報告。「ガラガラの店内でフィリピン人客が1人ということは当たり前」とし、「われわれが取り戻したいのは、何より日本人客。日本人は気前が良いだけでなく、中国人客や韓国人と違ってトラブルを起こさないからだ」とした。
会合に参加したマカティ警察第3分署のクリストファー・デルムンド分署長は、リトル東京周辺の飲食店からの声を受け、マカティ警察署が昨年12月から同地区に24時間体制で職員を配備し、警備強化を行っていることを説明。参加した経営者らは口をそろえて「この効果はすごく実感している。配備以前はひったくりも含めて毎週のように事件が起こっていたが、配備されてからはリトル東京周辺で事件は聞かなくなった」と語った。サンティアゴさんは「強盗は警備員は恐れないが、警察官は恐れる」と指摘。デルムンド分署長は「警察官のプレゼンスを可視化することは防犯に効果的な手段だ」とした。
▽店舗独自の取り組みも
リトル東京の向かい側のマカティ・セントラル・スクエア(MCS)で飲食店を経営する邦人経営者は、まにら新聞に対し、「自分が経営する店舗では事件発生以降、30%~40%売上が落ちている」と語る。「ある程度時期が経つとと客足が回復するものだが、年末にマラテで発生した銃撃事件の影響がこちらにも来ている」と述べた。
同経営者はクリス・ウーンさんのグループとも連絡を取り合う一方、独自の取り組みとして、顧客への無料送迎サービス、監視カメラの増加、スタッフへの支給無線を増やしスタッフ間の連携を強化する、自身のコネクションを活用して首都圏警察へ情報を上げるなどの対策を講じていると説明。「こういった安全確保対策も企業努力の一つ。安全確保への取り組みが伝わると、お客さんも安心してもう一回足を運んでくれる」と、困難な時期の取り組みを説明した。(竹下友章)