世界銀行は1日、同行の今会計年度(25年7月~26年6月)の各国の所得区分を発表した。上位中所得国(中進国)入り目前とされるフィリピンは最新の分類でも下位中所得国にとどまった。今年の中進国の所得水準は、一人当たりの国民総所得(GNI)で4496ドル~1万3935ドル。英字紙マニラブレティンによると、基準となる24年の比の一人当たりGNIは前年比150ドル増の4470ドルで、中進国入りまでわずか26ドルの差だった。今回の中進国入りはならなかったが、大きな経済危機が起こらない限り、来年までの中進国入りがほぼ確実。レクト財務相は同紙の取材に対し、「年末か来年までには上位中所得国の地位を獲得するだろう」と見通しを語った。
中進国入りは、1987年以来下位中所得国のままだった比経済が次の発展段階に入ったことを示す「悲願」。中進国入りすれば、一定水準の可処分所得を前提とする耐久消費財市場の本格成長をはじめとして、外資にとって市場・投資先としての魅力がさらに高まる。その一方で、農村人口の都市流入を通じた廉価(れんか)な労働力の近代部門への投入による経済の成長(いわゆる「ルイス型の経済成長モデル」)が限界を迎え成長が停滞する、「中進国のわな」のリスクが表面化するほか、政府開発援助(ODA)の譲許的融資条件の適用対象外となることで政府の資金調達コストが高くなるなど、新たな問題への戦略的な対応を迫られることになる。
▽積極財政で外部環境に対応
レクト財務相は比経済の見通しについて、「外部の脅威が依然として存在し、制御不可能な変化もある」として、中東での緊張の継続と、来週に発効する見込みの米国の相互関税を挙げた上で、「だからこそ来年度予算は拡張的になっており、成長、雇用、貧困の緩和を後押しし、インフラ投資と人的資本投資を促進する中身になっている」と強調。
さらに、「消費と投資を促進するため、マルコス政権はインフレ率を目標内に収めながら、利下げを続ける」と述べ、積極財政と緩和的金融政策による内需刺激策で外部環境の負の影響に対抗する方針を説明した。
東南アジア諸国連合(ASEAN)主要5カ国(フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム)の中で、比とベトナム以外の3カ国は上位中進国。(竹下友章)