かつて「パックマン」と呼ばれた男がいる。マルコス政権下の代表的政商、エドゥワルド・コファンコ氏。元大統領の威光を背に、優良企業をパクパクと買収したためこんな異名が付いた。エストラダ前大統領とは、「マルコス一家」の義兄弟のような関係。一九九二年の大統領選では、大統領︱副大統領候補のタッグを組んでラモス一派と戦った。
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野党「民族民主主義者国民連合」(NPC)の党首でもある。五月の統一選は、義兄弟の敵を討つ絶好の機会のように見えたが、当の本人は二月初旬に上院選不出馬を表明。「もう六十六歳。政治には十分すぎるぐらいかかわってきた」と似つかわしくないコメントを口にしていた。
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開票開始から数日後。地元英字紙が特集した地方選の得票経過を見て思わず息を飲んだ。ほとんどの州知事、市長選でNPCの公認候補が擁立され、優勢に戦いを進めていたからだ。そこには、二〇〇四年の次期大統領選へ向け、集票マシーンの整備を進めるパックマンの姿があった。 (酒)