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メガ・ダイク

1998/9/27 社会

傷つき続ける「生命線」

 地平線の向こうまで広がる草原と泥沼。東西を長大な堤に挟まれたパンパンガ州の「ラハール平野」は、乾・雨期で全く異なった表情を見せる。乾期にはバッタやハエが草原を飛び回るが、雨期には一転、泥の流れが生物の気配をかき消す。

 ラハール。フィリピンの人々は、九一年六月に大噴火を起こしたピナトゥボ山付近から流れ出る火山灰混じりの泥流をこう呼ぶ。九四、九五年に相次いで発生した大ラハールは、同州バコロール町を中心とする地域、約百五十キロ平方メートルを泥の海に沈めた。

 ラハール被害をくい止めるため、ラモス前政権は九二│九六年の五年間で、同州など三州内を流れる九水系に総延長五百五十キロの堤防を建設した。万里の長城(全長二千四百キロ)のほぼ四分の一にも及ぶ土の壁には、総額六十七億ペソの国家予算が投じられた。

 「平野」を挟んで東西にそびえ立つ堤防は、総延長五十六キロのメガ・ダイク。高さ十│十五メートル、東堤と西堤の間隔は平均で約五キロ。大ラハールが生んだ泥の海をそのままラハールの通路にすることで、近接する州都、サンフェルナンド市などが被害から救われた。

 実は、同市市民らの「生命線」建設はまだ完工していない。総工費二十七億六千万ペソのうち、堤防の斜面などをコンクリート補強するための予算約十億ペソが支出されていないためだ。

 土を固めただけの未補強部分は、風雨による浸食に極めてもろい。一雨ごとにどんどん削られていく。その結果、頂上部分から地上まで斜面を真っ直ぐにえぐった深さ数メートルの亀裂があちらこちらに生じた。

 これまで、補修予算などを使ってコンクリート補強された部分は二十一キロ余り。全体の三八%に過ぎない。今年六月から新たに十キロ分の補強工事が始まったが、工費未払いのため八月下旬から中断したまま。

 工事現場を視察していた公共事業道路省職員は「補強工事さえ終われば、決壊という最悪の事態は避けることができる。しかし、工事再開のめどは下院の審議が終わるまで立たないだろう」と話す。

 「平野」を背にして西堤の上に立ってみた。崩れ落ちた亀裂部分の先にはカラバオが草をはむ姿や田畑に囲まれて密集する民家など、かつて背の向こう一面に広がっていた日常の風景が見えてきた。(酒井善彦)

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