首都圏警察マカティ署のデラトレ署長は26日、マカティ市サルセドビレッジの不動産管理会社が「サルセドで拳銃強盗が増加している」という趣旨の入居者への通達を出し、それが拡散されたことを受け、同通達に明確な根拠がなかったと発表した。同署長は25日、みずから当該不動産会社を訪問し、責任者に同通達の根拠の説明を求めた。警備担当者から、当該通達が警備に報告・確認された情報に基づくものではないことを確認した。同署長は声明で、「恐怖心より事実を重視し、責任のある警告を行ってほしい」と呼びかけた。
警察筋によると、今月マカティ市で発砲を伴う拳銃強盗に遭ったと警察に報告したにもかかわらず、あるはずの証拠がなく、被害を訴えた本人(邦人)も警察報告書の請求だけを行い被害届を提出しなかった事案があったことなどを受け、マカティ署は未確認情報に基づく注意喚起に敏感になっているという。
▽被害届なしでは「犯罪」にならず
同声明の中でマカティ署は「1月から現在までサルセドビレッジでの強盗事件の報告はない」と説明。一方で日本大使館は、5月9日にサルセドビレッジで邦人を標的とした拳銃強盗が発生したと報告している。マカティ署所属のパルマ弁護士はまにら新聞の問い合わせに対し、「被害者が被害届を提出し、検察官送致できてはじめて『犯罪件数』として数えている」と説明。「強盗は被害者が被害届を出さなければ、『犯罪』の構成要件を満たさず、送検はできない」とした。また、犯罪件数の減少が報告された最近の国家警察のデータについても、「送検できなかったものは含まれない」とした。
警察によると、5月9日にサルセドビレッジのレビステ通りで発生した事件の被害を報告したのは25歳の邦人男性。携帯のほか、かばんに入っていたパスポートや各種カードを奪われたと証言した。マカティ第6分署は周辺の監視カメラを調べ、2台のオートバイに乗った4人の容疑者の映像を確認したが、同邦人男性は刑事告訴しない意思を表明した宣誓書を提出。その後、警察職員が男性宅を訪問したところ不在で、その後連絡が取れていないという。
フィリピンで強盗は親告罪であり、被害者が被害届(刑事告訴状)を提出しなければ、犯人への逮捕状の請求はできない。(竹下友章)