南シナ海の比排他的経済水域(EEZ)で比中の巡視船があわや正面衝突しかける事態が発生して一夜明けた7日、比沿岸警備隊(PCG)のタリエラ報道官(准将)は会見を開き、中国海警船が展開初日より10カイリ以上後退したことを明らかにした。その上で、比海域に巡視船を展開する中国側の意図について「違法なパトロールを常態化させることで海洋権益の主張をしようとしている」とし、「PCGは巡視船を派遣し、その様子を国際社会に公表し、中国船を後退させることを通じてその意図を阻止したい」との方針を説明した。
タリエラ報道官は今回の事態の経緯を説明。今月5日、海警局船の「海警3302」がサンバレス州パラウィグ町沿岸の83~85カイリの沖合に出現。それを受けPCGは44メートル級巡視船「BRPカブラ」(日本から調達)が派遣された。そして6日午前11時半ごろ、同海警船はPCG側の警告を無視して「危険操船」を続け、両船の船首が接近する事態になった。タリエラ氏は「海警船は99メートルであるのに対し、PCG船は44メートル。衝突したらどのような結果になるか想像の通りだ」と強調。その状況下で、「PCG船員の技術」により、衝突を回避した。
翌7日午前7時ごろ、「海警3302」はパラウィグ町から96~98メートルに動いたことが確認された。タリエラ氏は「BRPカブラは追尾しながら、1時間毎に無線警告をしている」と報告。同氏は「海警局はこれを『正当な海洋活動』と主張しているが、われわれは海警局にそのような活動を行う法的権限がないということを繰り返し伝達している」とした。
その上で、海警局の巡視「常態化」の試みは、1月4日に「モンスター」と呼ばれる中国海警局の世界最大級巡視船「海警5901」(165メートル)がサンバレス州沖に展開されたときから継続的に行われているとした。
▽EEZ内で科学調査疑惑も
さらにタリエラ氏は、比EEZ北部で中国の科学調査船が操業していることも報告。PCGはカナダ提供の船舶探知システムを通じて、同調査船が2日午前9時ごろに比北部のEEZに入り、現場にとどまっていることを確認。7日午前7時時点で、同船はバタネス州イトバヤト町から103カイリの海上に展開しているとした。同氏は「同船の行動パターンから、科学的調査を実施している疑いがある」と指摘。PCGは同船への監視と警告に当たっているとした。
国連海洋法条約(UNCLOS)では、海洋の科学的調査はEEZ沿岸国の管轄権の一つに挙げられている。(竹下友章)