ドゥテルテ前大統領が自陣営の決起集会で、「(自陣営候補を多数当選させるためには)現職15人を殺せばいい」と発言した問題について、国家警察を管轄する内務自治省は17日、同氏が刑法154条(違法行為教唆罪)、同142条(扇動罪)に違反したとして、検察に刑事告発状を提出したと発表した。マルコス大統領夫妻らへの「暗殺発言」で国家捜査局(NBI)から訴追が勧告されているサラ副大統領と共に、親娘で刑事訴追手続きに直面した格好だ。
告発状は同日、国家警察の犯罪捜査・摘発班(CIDG)が司法省国家検察局に提出した。
ドゥテルテ前大統領は13日、自身が名誉党首を務めるPDPラバンの決起集会で、「今、反ドゥテルテ派はたくさんいる。ならば現職の上院議員らを殺せばいい。そうすれば空席が生まれる。もし15人の上院議員を殺すことができれば、われわれの公認候補は全員当選できる」と発言。「それを実現できる唯一の方法は爆弾を使うことだ」と述べた。
CIDGのニコラス・トーレ班長(警視長)は同日、記者団に対し「フィリピンは新しい国になった。このような発言をし、その後で『単なるジョークだ』と主張することはもはや不可能だ。それが混乱の原因だ」と強調。前政権下に発生した超法規的殺害問題を念頭に「過去6年間、われわれは既に多くのことを経験したが、その混乱を今後も引きずり続けなければならないのか。つまり、殺戮(さつりく)を続けるのか」と問題を提起し、ドゥテルテ氏の熱心な支持者が実際の行動を起こす危険性を指摘した。その一方で、「今回の立件は政治を超越した事案だ」と強調した。(竹下友章)