武田薬品工業の比子会社、武田ヘルスケア・フィリピンと大塚製薬の比子会社である大塚ソーラー・フィリピンの代表者らは6日、マニラ市内のホテルで、比国内でのデング熱対策に向けた啓蒙事業を行なうことで基本合意書に署名した。
フィリピンのデング熱感染者数は2024年に34万860人と23年比で81%増まで急拡大しており、近隣のインドネシア(20万2012人)やマレーシア(10万6773人)よりはるかに多く、東南アジア諸国連合加盟国では最多となった。フィリピン保健省などは危機感を募らせており、デング熱ワクチン開発で世界を先行する武田薬品と比に進出して確固たる地歩を築く大塚製薬がまず感染症の拡大を防ぐための教育事業で提携する。
武田ヘルスケア・フィリピンのロレアン・ビリャヌエバ比事業本部長は署名式で、「2社の専門性と資源を統合して世界保健機関(WHO)が推奨しているデング熱予防管理アプローチや比保健省の5S戦略に基づき同感染症の感染予防に向けた啓蒙活動を行なう。企画会議を来週にも実施する」と述べ、住民や対象バランガイ(最小行政区)の保健師らに対する啓蒙活動を即座に始める姿勢を示している。
比保健省ではデング熱感染防止対策として長袖・長ズボンの着用や長期間水を溜めておかないこと、蚊の駆除の強化などを勧告している。
元保健省報道官のエンリケ・タヤグ博士は「デング熱感染症は政府にとっても負担となっている。毎年、35億ペソ以上の予算を投入している」と政府の経費負担にも懸念を表明している。また、同博士は「2023年には比食品医薬品庁に承認申請が出されている武田薬品のデング熱ワクチンがフィリピンでも早く使えるようになってほしい」と同社のワクチンに期待を示した。
タヤグ氏によると、武田薬品のデング熱ワクチンはWHOも大規模流行地域での子どもへの接種を推奨している世界初のデング熱ワクチンで、すでに世界48カ国で使用可能となっているという。しかし、同氏によると、フィリピンではデング熱ワクチンの死亡事例が相次いだ問題やフェイスニュースの広がりがあり、デング熱ワクチンに対する忌避感情が国民の間にあるという。
ノイノイ・アキノ政権下の2016年4月から集団接種が始まったサノフィパスツール社製デング熱ワクチンを接種した児童の中で、副作用で死亡したケースが100件以上あると報告され、ドゥテルテ政権が17年12月に同ワクチンの接種事業を中断している。(ロビーナ・アシド、澤田公伸)