国家捜査局(NBI)のハイメ・サンチャゴ局長は1月30日、ブラウナー国軍参謀総長やサンドバル出入国管理庁報道官、レムリヤ司法相らと合同で記者会見を開き、パラワン州にある比沿岸警備隊(PCG)や比海軍の施設や艦船の動きを監視するなどスパイ活動を行っていた容疑で中国人男性5人を逮捕したと発表した。NBIは1月17日にも米軍利用可能施設でスパイ活動をしていた容疑で中国籍のユアンチン・デン容疑者と比人ドライバー2人を首都圏マカティ市で逮捕していた。
30日の記者会見でメディアに公開されたのはチェン・ウー、チェン・ハイタオ、ジュレン・ウー、シャオフアン・カイ、ヨンイー・ワ各容疑者。2人はニノイ・アキノ国際空港で、ほか3人はマニラ市イントラムロス、同市ビノンド、東ネグロス州ドゥマゲテ市でそれぞれ1月24~25日に逮捕された。
サンチャゴ局長は記者会見で「容疑者らはパラワン州プエルトプリンセサ市にある比海軍のオイスターベイ基地や比沿岸警備隊の基地、アントニオ・バ ウティスタ空軍基地やデルピラール級PS16海軍基地などの施設付近に太陽光発電装置に繋がれた高感度の監視カメラを設置し、これらの施設に出入する艦船の動きを監視していた」と説明した。
また、同局長は収集した情報から、容疑者たちは月に1回、パラワン州に集合していたことも判明したとしている。
同局長は「彼らは許可なく我々の施設を調査しており、わが国の法律に違反したため逮捕した。中国人をターゲットにしているのではない」と強調した。
ブラウナー国軍参謀総長は会見で、「容疑者らは比艦船の情報をリアルタイムで送信していた。沿岸警備隊の巡視船や海軍の補給船を(南シナ海に)派遣する際の情報が流されていた」と説明。
また、中国政府が仕組んだスパイ活動なのかという質問に対して参謀総は、「注目しているのはスパイ活動そのものだ。これらの映像やビデオがどこかに送られているという事実について知ることだ」として、明言を避けた。
さらに、ブラウナー参謀総長は「海軍基地もドローンによって建物の配置などが撮影されていた。国家安全保障にとって極めて深刻な問題だ」と危機感を示した。
一方、サンドバル出入国管理庁報道官は会見で、逮捕された中国人たちは早ければ2002年にはフィリピンに入国しており、いずれも就労ビザを持ち、それぞれフィリピン人女性と結婚していたという。中には比中友好平和促進協会や中国系比人ボランティアグループのメンバーになっている者や、比政府関係者と交友のある者もいたという。(ジャスパー・タン、澤田公伸)