3件の弾劾告発や大統領脅迫容疑で当局の捜査に直面するサラ・ドゥテルテ副大統領は25日、父であるドゥテルテ前大統領が自身の弁護団に加わることを申し出たことを明らかにした。2022年の統一選挙前は一貫して父の意向に逆らいマルコス氏のペアの副大統領として当選したサラ氏が、マルコス政権との「後戻りできない」全面抗争を宣言する中で、父親と共同戦線を取る構えを見せた格好だ。
サラ氏は同日、記者団に対し、「父は私が父からの訴訟費用のための金銭援助を受ける意思がないと知ると、全ての訴訟に関する弁護団に加わりたいと申し出てくれた」と説明。
訴訟への準備について、「(下院に提出された弾劾告発状、国家捜査局(NBI)や国家警察が捜査している容疑に関する)内容の把握に努めており、その後にどの弁護士がどの案件を担当するか決定する」とした。
さらに訴訟の見込みについて、「いかなる法律にも違反していないと自信を持っている」とした上で、「ここには『法の支配』がないようにみえる。だがわれわれは対処してみせる」と法律闘争に意欲を見せた。
サラ氏に対しては今月、主に副大統領室・教育省の機密費不正使用疑惑を訴因として市民団体などが計3件の弾劾裁判を求める申し立てを下院に提出したほか、NBIはサラ氏が11月に会見で行った大統領夫妻らへの「報告的暗殺予告」を巡って出頭命令を出し、国家警察は下院侮辱罪で拘束されていた副大統領上席補佐官の移送を妨害したとして立件する方針を発表している。
▽「サラを大統領に」
ドゥテルテ、サラ両氏は25日、「牙城」のダバオ市で開かれたクリスマスイベントにそろって参加。イベントのスピーチでドゥテルテ氏はサラ氏を次期大統領に押し上げるよう参加者に呼びかけた。
それに対しサラ氏は、「前大統領の支援を感じている」としながら、「私はまだ候補者ですらない。選挙期間が始まるまで待とう」と述べ、含みを持たせつつ明言を避けた。
ドゥテルテ氏もサラ氏も、届け出前には正副大統領への立候補を否定していた経緯がある。自身の立候補を望む声を見極めるとともに、「焦らし」によってその声を高まらせる戦術とみられ、この時期から立候補を否定しないことからは、次期大統領の座を狙う意欲の高さも見え隠れする。(竹下友章)