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「親族が集まる大切な機会」 万聖節で人が戻った墓地

2022/11/2 社会
墓に花やロウソクを供える人々=首都圏マニラ市の南部墓地で1日午後3時ごろ、深田莉映撮影

万聖節を迎え、2年ぶりに開放された南部墓地には多くの人が集まり、親族で団らん

 万聖節(ウンダス)期間を迎え、首都圏マニラ市の南部墓地はコロナ禍を経て2年ぶりに開放された。1日午後5時時点で、入場者は20万4486人。午前中は大雨に見舞われたにもかかわらず、入り口付近は人がごった返し、封鎖された道路沿いに約700メートルの入場待ちの列ができていた。墓地内だけでなく周辺の道路脇にも、墓に供える花やロウソク、軽食や飲み物、おもちゃなど様々なものを売る店が並び、縁日のような盛り上がりをみせていた。

 墓地の中では多くの人がそれぞれの棺の前でロウソクの火を灯し、食事をしながら団らんしたり、静かに物思いにふけったりしていた。台風パエンと午前中の大雨の影響で地面がぬかるみ、名前版が割れたり泥をかぶったりしている棺も多く、掃除に勤しむ人の姿も見られた。また、無料のトライシクルバンが走り、いたるところに警察や消防隊、地方自治体のボランティア団のテントが張られ、パトロールに配備されていた。

 カビテ州やマニラ市、マンダルーヨン市など首都圏各地から集まった親族15人と一緒に、墓地の前で団らんしていたビリー・メンドーサさん(25)は、「コロナで過去2年間は墓地で集まれなかった。万聖節はばらばらの親族が集合できる大切な機会。今年は4連休で盛大にリユニオンを果たせて本当にうれしい。皆が楽しんでいる姿を見せることが一番」と笑顔を見せた。また、メンドーサさん自身はコロナで亡くした親族はいないが「コロナで親族を亡くした友人はきちんとお別れできなかったことを悔やんでいた。きっと今日を迎えられて喜んでいると思う」と話した。「アルコール飲料の持ち込み禁止だけが残念。来年こそは棺に眠る祖父母らのためにもここで親族で盃を交わし、真のフィリピンスタイルで万聖節を祝いたい」と語った。

 フレデリック・パブロンさん(57)が親族20人と囲んでいた棺の1つには、今年2月にわずか2歳で亡くなったベイビー・ビーちゃんが眠る。双子だったが、未熟児で産まれたため体が弱く、生き抜けなかったという。「もう1人は元気に生きているが、3歳でコロナワクチン未接種のため今年も墓地に入れなかった。早く双子の片割れの魂に会いに来させてあげたい」と微笑みながら遠い目で空を仰いだ。

▽警備にドローン登場

 南部墓地周辺の頭上では、新しい試みとしてパトロール用のドローンが投入されていた。首都圏警察マニラ署の警官によると、ドローンが撮影している映像は、新たに立ち上げられた同署と地方自治体の部隊が別の場所でモニターし、墓地に配置された警官や消防隊らは墓地内部の対応にあたっているという。

 入り口の荷物検査ではタバコやライター、鋭利で危険とみなされたものなどが没収されていたが、マニラ署の警官は「台風パエンが過ぎ去った直後の上、午前中は大雨だったため多少の混乱を覚悟していたが、今のところ大きな事件も事故もなく、至って平和で秩序は保たれている」と話した。(深田莉映)

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