最高裁判所の違憲判断を受け上院がサラ副大統領への弾劾訴追を棄却する方向に傾く中、パギリナン上院議員らは7月31日、棄却反対の決議案を提出する予定だと明らかにした。一方、上院副議長に再任されたジンゴイ・エスラダ氏は、24人の上院議員のうち「19人~20人が最高裁の判断を支持するだろう」との見通しを示し、6日に予定通り弾劾訴追への対応について議決すべきとの見解を示した。
先月25日に出た最高裁判断は、あくまで手続きが「年1回ルール」に抵触したとしているだけで、訴因の内容を棄却したわけではないとし、再審請求も可能としている。下院は期限となる11日までに再審の申し立てを行う見込みだが、再審請求の前に先月弾劾裁判所を招集した上院が訴追棄却の議決をする可能性も高まってきた。
「上院は一つの証拠も証人も調べていないのに何を棄却するというのか。われわれ少数派は論戦する準備はできている」。決議案に名を連ねるリサ・ホンティベロス議員は記者団にそう息巻いた。ただ弾劾訴追継続の決議に名を連ねるのは、現時点で、パギリナン、ホンティベロス両議員のほか、故ノイノイ・アキノ元大統領のいとこであるバム・アキノ議員、少数派(野党)院内総務のビセンテ・ソット議員(元上院議長)の計4人だけ。
決議案は、現行憲法の起草者の一人であるアドルフォ・アズクナ元最高裁判事の見解を引用。「判例では、弾劾の申し立ては下院の議事日程に組み込まれ、委員会に付託されてはじめて『開始された』とみなされる」との見解を示し、「以前に確立された法的定義が有効だと認められること」を求めている。
決議案を起草したパギリナン議員は「下院が再審請求を行った場合、それに対する最高裁の決定が下されるまで、判断は最終的なものにはならない」と主張。「19~20人の上院議員が最高裁に従うというのなら、再審請求に対する最終決定が下るまで棄却決議を保留すべきだ」とした。
最高裁の7月25日の判断では、市民団体らが憲法11条3項の2に基づき提出した3件の弾劾状と、下院が11条3項の4に基づき提出した弾劾状について憲法上の区別し、11条3項の5で禁止する「同一公職者に対する年1回を超える弾劾手続きの開始」に違反したと判断している。(竹下友章)