エスクデロ上院議長は29日、下院によるサラ副大統領に対する弾劾訴追の手続きを違憲とした25日の最高裁判断に「従わない理由がない」との考えを示した。同日開かれた第20回国会最初の上院本会議では、各議員が判決文を検討する期間として1週間が割り当てられ、8月6日までに本会議で上院としての対応を議決することを決定した。弾劾訴追を棄却する動議が提出される見込み。一方で、下院のアバンテ報道官は、「あらゆる手段を尽くして戦う」と宣言した。
エスクデロ氏は同日開いた会見で、最高裁の判断について「この問題で弾劾裁判を再度召集する必要はない」と明言。さらに「法律家としての個人的な意見だ」と断りながら、「最高裁の判断は明確であり、弾劾告発は始めから無効だというものだ」とした。
さらに「既に最高裁は判断を下しており、同意しようがしなかろうが、決定は順守されるべきだ。そうしなければ、憲法上の危機を招くことになる」とし、米国資本に依存する政情が不安定な中南米などの小国を指す 「バナナ共和国」という言葉を用い、「近隣諸国の人々は、われわれを望んだことにしか従わない『バナナ共和国』とみなすだろう」と指摘した。
最高裁は、昨年末に市民団体らによって提出された憲法11条3項の2に基づく3件の弾劾告発状と、今年2日に11条3項の4(下院の3分の1以上による弾劾告発)に基づいて下院議員により提出された弾劾告発状を別件と扱い、「同一の公職者に対する弾劾手続きは、1年間に1回を超えて開始されない」と定める憲法11条3項の5に違反したと判断している。
下院は2月、市民が提出した3件の内容を総合した弾劾告発状を作成し、3分の1を大きく超える215人の署名を集めて即時採択。一方で、前3件は憲法が規定する委員会の審議にかけず、アーカイブ送りとしていた。
下院のアバンテ報道官は29日、「今回の最高裁判断は、公式記録と矛盾する誤った事実認定に基づいている」とし、内容を精査の上、判断の再検討を求める動議を期限となる8月11日までに提出する予定と述べた。
同報道官は「最初の3件が4件目の前に処理されたとする(最高裁の)主張は誤り。下院は憲法、下院規則、判例に従って処理した」と述べ、「4件目の弾劾訴状だけ手続きが開始されたため、年1回ルールには違反していない」と主張。「弾劾告発に関する下院の専権を守るため、あらゆる法的手段を講じて戦う」と表明した。憲法11条項の1は、下院に「弾劾裁判を開始する独占的な権限」を認めている。
最高裁は、判断は既に効力を有しているものの、再検討の申請はできるとしている。最高裁判断の再検討請求は、判断が通知されて15日以内に行うことができる。(竹下友章)