首都圏ケソン市の国家警察本部(キャンプ・クラメ)で2日、トーレ第31代国家警察長官が正式に就任した。就任式ではブラウナー国軍参謀総長や外交使節団も見守る中、マルコス大統領が最高階級の四つ星肩章と警察長官帽を授与した。新長官は、昨年9月に2週間にわたる大規模強制捜査を通じ、 ドゥテルテ前大統領の盟友である新興宗教「イエス・キリストの王国」の教祖アポロ・キボロイ師の逮捕を成功させ、今年3月には国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状と国際刑事警察機構(インターポール)の手配の発付に伴うドゥテルテ氏の迅速な逮捕劇を主導した人物だ。
就任後の会見で、「ICCからロナルド・デラロサ元警察長官(現上院議員)にも逮捕状が出るとのニュースもあるが、もし逮捕状が出たらどのように対応するか」との質問に対し、トーレ新長官は「その時になったら対応する。これは行動を起こさなければならないものだ」と述べ、元警察長官で、先の上院選では3位得票で再選を果たした有力「ドゥテルテ・チルドレン」のデラロサ氏の逮捕に前向きな姿勢を示した。
マルコス大統領は就任式のスピーチで、「私からの課題は、警察を清廉潔白に保ち、法を犯した職員に対する捜査を迅速化し、正義が実現するようにすることだ」と新長官に命令。同時に、違法薬物との戦いの継続も指示した。
マルビル前警察長官は昨年10月、下院委員会で実施された前政権期の超法規的殺害問題の調査に基づき、麻薬関連の未解決事件を調査するよう指示を出している。さらに同委員会は昨年末にドゥテルテ氏の親族(息子のパオロ下院議員、娘婿のカルピオ氏)が麻薬取引に関与していたという証言を報告書にまとめている。
トーレ新長官の下で、超法規的殺害や麻薬取引に関与した警察職員の摘発が本格化し、それを口実とした警察内ドゥテルテ派の粛清、さらにはドゥテルテ一家への摘発が行われるシナリオもありそうだ。
▽サラ副大統領は失笑
オランダ・ハーグに収容されている父・ドゥテルテ氏に面会するために同国を訪問中のサラ氏は5月31日、「父の逮捕作戦を実行したトーレ氏が警察長官に任命されたことをどう思うか」との記者からの質問を受けた際、笑って見せ、「申し訳ないが、これ(失笑)が私の回答だ」とだけ述べた。
また収容中のドゥテルテ氏については、「ICCがすべての人の人権を擁護するというのなら、父の人権も尊重しフィリピンに帰すべきだ」と主張した。(竹下友章)