エスクデロ上院議長は、サラ副大統領への弾劾裁判を6月3日(午前9時)に開廷し、下院の弾劾検察役を受け入れることをロムアルデス下院議長に書簡で通知した。書簡は19日付。22日に公表された。副大統領室も19日に同内容の書簡を受け取った。中間選挙の結果を受けて議会構成が変わる前に招集されることになり、弾劾裁判が次期国会に持ち越せるかという問題も再燃しそうだ。 上院議長の書簡の日程だと、6月2日に本会議で下院検察官役による弾劾条項の提示や弾劾裁判手続きの改定を実施。3日に弾劾裁判を招集し、4日に弾劾対象者(サラ氏)への召喚状を発行する。そして14日から弾劾被告・検察役からの答弁書を受領し、24日から予備審理を開始。7月28日に次期(第20回)国会の開会式・大統領の施政方針演説が行われ、翌29日に上院新議員による弾劾裁判官宣誓式を実施。7月30日に本審理を開始する。
ドゥテルテ政権期に大統領法律顧問を務めたパネロ弁護士は、ANCニュースで「次期下院は現下院と継続性がないため、次期上院はその弾劾申し立て手続きを進めることはできない」との見解を提示している。
▽大統領は弱気
弾劾裁判開廷を目前にし、下院の検察役、サラ氏の双方とも強気の姿勢を示している。一方で、2月に下院で弾劾の告発が議決された時から「仕方なかった」というスタンスを取ってきたマルコス大統領は、早くも和解を口にするなど弱気だ。
ABS―CBNニュースによると、下院検察役の1人で中間選挙で再選されたイザベル・ザモラ議員(ラカスCMD所属)は、「検察側は90%準備が整っている」と強調。「上院にはドゥテルテ派の議員が多いが、われわれは弾劾条項を裏付ける証拠を数多く持っている。それを考えると、サラ副大統領を無罪にするのは困難だろう」と自信を示した。サラ氏への弾劾理由は、副大統領室・教育省の機密費問題、大統領夫妻とロムアルデス下院議長への「条件付き殺害予告」など複数挙げられている。
一方、サラ副大統領は17日に「裁判に向け全力で準備を進めている」とした上で、「弁護士は複数の法的選択肢を有しているが、私は血みどろの法廷闘争を望んでいると伝えた」と発言するなど、「全面抗争」の姿勢。下院政党リスト制選挙で得票率2位の政党「ドゥテルテユース」はマルコス大統領への弾劾裁判の申し立てに動く。ドゥテルテ氏の「側近中の側近」ボン・ゴー上院議員は上院議員として歴代最高を更新する2700万票を得票するなど、世論は親ドゥテルテに傾いている。
こうした中、マルコス大統領は19日、自身のポッドキャストで配信したインタビューで、サラ氏と「和解の意思がある」と明言。「私が求めているのは安定であり、そうしたことに常に前向きだ」と秋波を送った。上院での弾劾プロセスについては、「上院の管轄権下にある問題だ」とし、不介入の立場を表明した。(竹下友章)