米国務省は米時間24日までに、既存の対外援助をほぼ全て停止し、新規援助も凍結する内容の指示を米在外公館に出した。トランプ大統領が就任の日に出した、対外援助の効率性を評価するために90日の援助停止を命じる大統領令を受けた措置。食料支援、イスラエルおよびエジプトへの軍事援助以外の全ての対外支援が対象で、開発協力から軍事援助まで含む包括的な内容とみられる。90日の凍結期間中、効率性や政権の外交政策と一致するかが審査される。
米国は比米防衛協力強化協定(EDCA)に基づく比国内の軍事施設整備のほか、米国務省・国防省による比沿岸警備隊(PCG)訓練施設の供与(2023年)をはじめとする海上保安能力支援、昨年決定した対外有償軍事援助(FMF)を通じた5億ドルの軍事援助など、複数の経路で比に広義の安全保障支援を提供しており、今回の措置で比がどう影響を被るかが焦点。審査が行われる90日の凍結期間中に、比政府は米国第一主義を掲げるトランプ政権に対し、比への援助が米の国益にも資することを説得する必要性に迫られた格好だ。
大統領府広報室は25日に声明を発表。「比外務省は当該情報を注視しており、米国務省および米国政府のパートナーと協力して、これがフィリピンにどのような影響を与えるかを判断する」とした。比外務省のデベガ次官は25日、「ホセマヌエル・ロムアルデス比駐米大使が公式・非公式の外交ルートを通じて積極的に米国政府に働きかけを行っている」と説明した。
同大使は翌26日、ラジオ番組に出演。援助凍結措置について、「米国が全ての国に対する対外援助を見直す厳しい時期に行われているに過ぎず、恐れる必要はない」とした上で、「EDCA施設の整備などは『援助』とみなされないと思う。これは(比米相互防衛)条約に基づいており、インド太平洋地域に米国がプレゼンスを持つことは両国の利益になるからだ」との見通しを示した。
26日の英字紙ブレティンによると、フィリピンは米国にとってインド太平洋地域最大の軍事援助対象国。2015年から22年にかけ比は計11億4000万ドル規模の装備・訓練の提供を受けている。
一方、経済協力については、下院のサルセダ議員が「比に対して主に(政府開発)援助を行っているのは、日本、世銀、アジア開発銀行(ADB)、アジアインフラ投資銀行(AIIB)であり、近年米国は比にとって主要な援助国ではなかった」と指摘。その上で、「比が米国に求めているのは開発援助よりも最大の輸出先である米国への市場アクセスだ」と強調し、第2次トランプ政権の関税強化路線に対する警戒感を示した。一方で、同議員は「マルコ・ルビオ米国務長官は、まず最初にフィリピン(外相)に電話をかけた」とし、「比米の結びつきは引き続き強固で戦略的。米国のアジア政策と権益において比が最も戦略的に重要であることを認識しないことは、米国にとって利口ではない行動だ」と述べた。 (竹下友章)