フィリピン陸軍が陸上移動式中距離ミサイル発射システム「タイフォン」の調達を発表したことを受け、中国外務省の毛寧報道官は26日、会見で「タイフォンは通常兵器だけでなく核ミサイルも発射できる。自衛装備でなく、戦略的かつ攻撃用の兵器だ」と述べた。その上で、「中国の安全保障上の権益が脅かされれば、中国は座視しない。比が今の方向の変更を拒否し続ければ、自国の国益を損なうことになる」と述べて対抗措置を示唆し、強く警告した。
タイフォンは巡航ミサイル「トマホーク」と弾道弾迎撃ミサイル「スタンダードミサイル6(SM6)」を発射可能だが、トマホークには核弾頭の搭載が可能で、比北部に配備すれば中国本土を射程に収める。
同報道官は、4月に軍事演習用に持ち込まれた米軍のタイフォンがまだ比国内にあることを問題視。「比はタイフォンが比米合同演習バリカタン、サラクニブだけに使用され、演習終了後の9月に撤去されると公言してきた。しかし比政府はその後前言をひるがえし、タイフォンを比に置き続ける意向を示し、さらには調達を予定していると発表した」と述べ、「約束を反故にしている」と批判。「これは国家安全保障を防衛を他国に委ねる行為であり、地政学的な緊張と軍拡競争を激化させ、地域の平和と安全を重大な脅威にさらすことになる」と警告し、速やかな撤去を要求した。さらに、「誰がこれを独立外交だと信じるのか。誰の利益にもならない」と比の立場に強く疑問を呈した。
テオドロ国防省は24日の声明で、タイフォンの調達は「独立外交方針に基づく包括的群島防衛構想(CADC)に従った決定であり、特定の国を対象としていない」と説明していた。
▽「被害者のふりやめよ」
テオドロ氏が24日の声明で「中国共産党が本当に地域の緊張と不安定を低減させる意思があるなら、武力の誇示、挑発行為、内政干渉、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)への違法展開をやめ、国際法に従うべきだ」と述べたことについて、毛報道官は「南シナ海で挑発し騒ぎを起こしているのは誰か。外部勢力と結託して力を見せつけているのは誰か。国際法を破りながら、それを守ると主張しているのは誰か」と猛反発。「フィリピンの一部の人々は、認識を改め、自らの言動を反省し、真実をゆがめて被害者ぶることをやめる必要がある」と応戦した。
また、中国国防省の張暁剛報道官は26日の会見で、比沿岸警備隊(PCG)が「大国である中国が小国である比をしいたげている」と批判していることに対し、「中国とフィリピンの間の海洋紛争は、どちらが大きくてどちらが小さいかという問題ではなく、善悪の問題だ」と強調。「フィリピンは何度も巡視船や漁船を組織し、中国の領土主権や海洋権益を侵害し、南シナ海地域の平和と安定を危険にさらし、被害者を装い国際社会の同情を集めて混乱させようとしているが、これでは絶対に成功しない」と述べ、比に「正しい道」に戻るよう勧告した。
それに対しPCGノタリエラ報道官は、公式SNSに反論を投稿。「『正しい道』とは、生活のために自国のEEZで漁業を営む漁民への攻撃をやめて国際法に従うこと」とし、「仮に比側に漁民を組織して海洋に展開するシナリオが存在するのなら、なぜ中国はいつもその『筋書き』通りに行動し、わざわざ悪役を演じるのだろうか」と指摘した。(竹下友章)