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新・帝国劇場の概要が明らかに、“ここちよい帝劇”を目指し快適な観劇環境を提供

2025/1/16 日本エンタメ

今年2月をもって休館し建て替えに入る東京・帝国劇場。建て替え後の新劇場の概要が決定し、本日1月16日に記者発表会が行われた。

今年2月をもって休館し建て替えに入る東京・帝国劇場。建て替え後の新劇場の概要が決定し、本日1月16日に記者発表会が行われた。

新・帝国劇場のエントランス(有楽町側より)。(提供元:小堀哲夫建築設計事務所)
【動画】エントランスから客席へ一直線!新・帝劇がわかるイメージ動画

設計者は小堀哲夫氏、自然に包み込まれる劇場へ

帝国劇場は1911年に開設され、1966年に現在の2代目の建物が竣工。半世紀以上にわたって多数の名作が上演されてきたが、劇場が入るビルの老朽化に伴い建て替えが決定した。現・帝国劇場の最後の演目として、2月14日から28日にはスペシャルコンサート「THE BEST ~New HISTORY COMING COMING~」が上演される。

新・帝国劇場の模型を挟んで立つ東宝株式会社エンタテインメントユニット演劇本部長・池田篤郎常務執行役員(左)と、建築家の小堀哲夫氏(右)。

新劇場の設計者として本日発表されたのは建築家の小堀哲夫氏。東宝株式会社が指名した設計者が参加できる“指名型プロポーザルコンペ”を通じて選出された。本日の会見には東宝のエンタテインメントユニット演劇本部長である池田篤郎常務執行役員と、設計を手がける小堀氏が登壇。新劇場の概要を説明した。

新劇場は新たに建設されるビルの地上4階、地下2階を占める。新劇場は初代と現在の帝劇独自の特徴を発展させることを軸に、客席や舞台は現状と同規模で設計。ロビー空間やバックヤードを充実させ、劇場の演出技術を豊かにすることで“世界に発信する日本のフラッグシップの劇場”として誕生し、観客や俳優、スタッフ、劇場のある丸の内の街で暮らす人々にとっての“ここちよい帝劇”を目指す。新劇場の建築のコンセプトは「THE VEIL」。皇居に面した劇場が水や光、豊かな緑などの自然に包み込まれるイメージを通じ、豊かな観劇体験を作り上げる。

配置を90°回転、客席はエントランスの正面に

新・帝国劇場のエントランス(正面より)。(提供元:小堀哲夫建築設計事務所)

新劇場のメインエントランスは現在と同じく丸の内5th Street側に配置されるが、劇場の配置を90°回転することでエントランスの正面に客席を配置。正面性を高めることで格式高い劇場空間を作り上げ、開演時および終演時の混雑緩和に配慮した動線を計画する。客席数は現在の劇場と同等数程度だが、見やすいサイトラインを備えたゆとりのある座席とし、快適な観劇環境を整備。現在と同規模の舞台空間には世界レベルの最先端の舞台技術を導入し、楽屋やスタッフのスペースの快適性にも配慮する。

またロビーやホワイエ空間を拡張して多様な過ごし方を提供するほか、トイレ等のユーティリティ機能を拡充して総合的な観劇体験の充実を図る。有楽町駅側の南東の一角には一般客も利用できるカフェ等を併設し、地域に親しまれる劇場を目指す。さらに劇場全体でのアクセシビリティも強化。地下にはエレベーターとエスカレーターを設けた劇場ロビーを新設し、多様な観客が訪れやすくなる計画となっている。

全座席からの視界をシミュレーション、トイレは大幅増

新・帝国劇場の客席(上手側より)。(提供元:小堀哲夫建築設計事務所)

現在の劇場の象徴的な舞台機構である“盆”と“せり”は廃止されるが、フレキシブルなユニット機構を用いることで複雑な演出にも対応する。また現在は歌舞伎も上演できる劇場として、花道を作るために客席の傾斜を低く押さえる必要があったが、新劇場では傾斜を付けて全座席からの見やすさを整える。設計においてはすべての客席からサイトライン(観客の視線)の検証ができるシステムを導入しているとのことで、小堀氏は「すべての客席でどのくらい見えやすくなるかをVRモデルを使用して検証しています。人流シミュレーションや退席時間の検証もしながら設計をしています」と説明。池田氏は小堀氏のそうした取り組み方を「図面だけを見て決定するのではなく、VRやARを駆使して劇場の中にいるようなビビッドな感覚でジャッジできる」と評し、設計者に選出した理由の1つとなったことを明かした。

多くの観客にとって気になる点である劇場内のトイレに関しては、池田氏が「現在は休憩時間に列ができてロビーを横断してしまうが、大きく占拠するような事態にならないように現有よりも大幅に増やします」と明言。小堀氏も「シミュレーション技術を使ってトイレの個数や待ち時間、ロビーの行列を検証している。ロビーが混雑しないように計画しています」と改善に向けた計画を明かした。また劇場内のバリアフリー化も促進され、現在客席1階に1カ所しかない車椅子スペースを2階にも増設。楽屋エリアにも多目的トイレを設置するという。

新劇場の施工業者は現時点では未定ながら、オープン時期は2030年度を目指しているとのこと。池田氏は「昨今の建築情勢や働き方、人手の問題が工事期間にも影響する。新しい劇場をいち早くお届けしたいという気持ちはあるがなかなかコントロールできないため、2030年度という目標に変化があればお答えできる時期にお知らせしたい」と語った。

※記事初出時より一部表現を変更いたしました。

提供元:音楽ナタリー

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