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雨雲を吹き飛ばした最終公演
今年でインディーズデビュー10周年を迎えたヒゲダン。本ツアーは彼らにとって初のスタジアムツアーで、大阪・ヤンマースタジアム長居（長居陸上競技場）で2公演、日産スタジアムで2公演の全4公演が行われ、計25万人を動員した。
来場者たちを濡らした雨は開演が近付くにつれ徐々に弱まり、恒例のBGMであるMy Chemical Romance「Welcome To The Black Parade」が流れる頃には雲の隙間から青空が覗く。ヒゲダンの強運を感じさせる空のもと、7万人の力強いクラップがこだました。巨大なLEDスクリーンにはステージへ向かうヒゲダンを追うリアルタイムの映像が。ついに姿を現し、大歓声に迎えられた4人は「Same Blue」でライブをスタートさせ、上空へ突き抜けるような疾走感あふれるバンドサウンドとクリアな歌声を響かせた。「日産スタジアムの皆さん！ ツアーファイナルに来てくれてありがとうございます！ 最後までよろしく！」と藤原聡（Vo, Piano）が挨拶し、ホーンセクション、コーラス隊を含むサポートメンバー総勢10名を交えた豪華絢爛な音色で「Universe」「ミックスナッツ」が奏でられる。高度な演奏を繰り出しながらもリラックスした様子でこの大舞台を全力で楽しむメンバー4人がスクリーンに大写しになった。
気温と反比例する熱いパフォーマンス
「友達と来た人、家族と来た人、いろんな人がいると思います。1人で来てくれた人も、1人じゃないぜ。ヒゲダンが近くにいます。音で近くまで寄っていきますのでよろしくお願いします！」と本公演への意気込みを語った藤原。その言葉に続き、ヒゲダンは日没が迫る時間帯に似合うエモーショナルな楽曲を畳みかける。ロマンチックな人気曲「115万キロのフィルム」では藤原が美しいフェイクで会場を沸かせた。彼らがその名を知らしめた大ヒットナンバー「Pretender」の演奏が始まると、客席から歓声が。続く「イエスタデイ」では噴水がステージを幻想的に彩り、凍てつくような映像演出とともに奏でられた「Subtitle」ではセンチメンタルな旋律が聴衆の胸に染み渡った。
続いてヘビーなインストゥルメンタルナンバーがスタート。楢崎誠（B, Sax）、松浦匡希（Dr）、小笹大輔（G）が競り合うように演奏を繰り広げる中、客席ではライトリストバンドが真っ赤に点灯しムードを盛り立てる。そのまま「FIRE GROUND」につながると、ショルダーキーボードを弾く藤原や高速タッピングソロで魅せた小笹、ヘッドバンギングを繰り返す楢崎の本能むき出しのステージングと、火柱が上がるド派手な演出が観客の胸をたぎらせた。藤原の音頭で“乾杯”をして水分補給を挟み、ライブは“お祭りゾーン”に突入。ヒゲダン楽曲の中でもとりわけ開放的なアッパーチューン「ノーダウト」はスカバージョンで披露され、メンバーそれぞれがステージ上を縦横無尽に駆け回った。照明演出が鮮烈な「Cry Baby」が終わる頃にはすっかり日が暮れ、ひんやりとした風が観客の体感温度を下げるも、ステージから放たれる熱は上昇するばかり。「ホワイトノイズ」では小笹の攻撃的なギターサウンドが熱狂を誘った。
Official髭男dismが死ぬまで追いかけ続ける夢
「10年前、僕らは横浜ワールドポーターズというショッピングモールでライブをやっていました。そのときから無駄なライブなんてもちろんなくてさ。こっから先も何本もライブをやっていくけど、どんなに小さいライブも今日みたいなライブも絶対に忘れたくないんだよね。人間にスマホみたいに容量があったとしても絶対に消したくない。それくらいかけがえのないものだから、最後の1音まで心に刻んでやろうと思います」。ピアノを弾きながらじっくりと胸の内を語った藤原の言葉に続き「TATTOO」が披露され、観客はヒゲダンの思いと音を心に刻み込む。ラスト2曲となったタイミングで、藤原は再び言葉を紡ぎ出した。2012年の結成時からの歩みを振り返り、メンバーやヒゲダンファミリーに感謝を伝えた藤原は「何より僕たちが恵まれたのは愛してくれる人たちでした。つまり皆さんのことです。最初は自分たちがいいと思う音楽をやれればいいと思っていました。でも今はみんながどう思うかな？と考えるようになりました。みんながスタジアムに立てるバンドに育ててくれたんです」とすべてのファンへの並々ならぬ思いを口にする。
続けて彼が「これからみんなに悲しい出来事や人生の意味を考えることがもしあったとしても、みんなが生きて暮らしていることがとても大切な光で、このバンドを生かす力になってます。だって僕が倒れそうになったとき、何度も救ってくれたから。あなたの人生がヒゲダンを強くしているということを絶対に忘れないでほしいし、忘れちゃっても何度も思い出せるように、これからもいい音楽といいライブを作っていく。それが日産スタジアムを経てOfficial髭男dismが死ぬまで追いかけ続ける夢です。こんなにも誇らしいバンドにしてくれて本当にありがとう」とまっすぐに思いを伝えると、「Chessboard」の演奏がスタート。スクリーンでは次元の狭間に迷い込んだかのような映像演出が展開される。それはやがて緑色のライトリストバンドで埋め尽くされた会場へとつながり、スタジアムが大合唱とともに深い感動に包まれた。そしてヒゲダンは最後に“ねぎらいソング”「50%」をプレイ。この日一番のシンガロングを巻き起こしてステージをあとにした。
俺たちは、音楽を、やめない！
アンコールに応えたヒゲダンは、まずはミラーボールが幻想的に照らす中で「I LOVE…」を演奏。さらにキャパシティが150人のライブハウスに出演していた頃から演奏している「異端なスター」を7万人と一体となり楽しんだ。「準備はいいかー!?」とヒゲダンが気合いを入れて披露した「SOULSOUP」のラストには、藤原がすさまじいロングトーンで観客を圧倒する。「本当にありがとう！ これからもいい音楽とライブを作ってあなたのそばにいられるようにがんばります。みんながしんどくて『音楽なんて聴けるかよ』ってときだってずっとそばにいるから！ みんなが気付くまで、俺たちは、音楽を、やめない！」と藤原が絶叫し、ラストナンバー「Stand By You」へ。最後の最後まで力強いクラップと大合唱が轟いた。そして空にはド派手な花火が炸裂し、ヒゲダンと観客みんなで作り上げたスタジアムライブの成功を祝福。涙をにじませる松浦を含め、ステージ前方にそろったヒゲダン4人は、深々とお辞儀をしてメモリアルなライブに幕を下ろした。
各種音楽配信サービスでは本公演のセットリストのプレイリストが公開されている。また本公演の模様は10月17日より全国47都道府県の劇場で上映されることが決定した。
※楢崎誠の「崎」は、たつさきが正式表記。
セットリスト：Official髭男dism「LIVE at STADIUM」公演の再生はこちら
セットリスト
「OFFICIAL HIGE DANDISM LIVE at STADIUM 2025」2025年6月1日 日産スタジアム
01. Same Blue
02. Universe
03. ミックスナッツ
04. パラボラ
05. Laughter
06. 115万キロのフィルム
07. Pretender
08. イエスタデイ
09. Subtitle
10. FIRE GROUND
11. ブラザーズ short ver.
12. ノーダウト SKA ver.
13. Cry Baby
14. ホワイトノイズ
15. 宿命
16. TATTOO
17. Chessboard
18. 50%
＜アンコール＞
19. I LOVE…
20. 異端なスター
21. SOULSOUP
22. Stand By You
提供元：音楽ナタリー
