各界の著名人に愛してやまないアーティストについて語ってもらう連載「私と音楽」。第46回となる今回は、ピン芸人・
今年3月に行われたピン芸人の大会「R-1グランプリ」にて、23歳の若さで優勝を果たした友田オレ。同大会の優勝会見で「共演してみたい憧れの人」を聞かれた彼が
取材・文 / 石井佑来 撮影 / YOSHIHITO KOBA

カッコよすぎないところも含めてカッコいい
米米CLUBを知ったきっかけは、実家で観た“ヒットソング特集”みたいな番組だったと思います。その頃からなんとなくカッコいいなと思ってはいたんですけど、中学生・高校生になったあたりから本格的に聴くようになりました。思春期だったので人並みに悩みとかもあったけど、米米CLUBの曲は気分がいいときに聴いていて。気分が上がってるときは米米CLUB、思い悩んでるときは神聖かまってちゃん、みたいな感じ。ネタの曲を作ってくれている清水遊という幼馴染がいるんですけど、彼とイヤフォンを分け合いながら、お互いの好きな曲を聴かせ合ってましたね。僕が米米CLUBを聴かせて、向こうがEaglesを教えてくれたり。

僕が通っていた高校の文化祭では、毎年2日目に大きなホールで生徒がパフォーマンスをするんですよ。太鼓やダンス、演劇などが例年の定番なんですけど、ある年に僕と清水で「バンドやらない?」と提案したんです。そしたら、意外とみんな保守的で「前例ないしなあ」と受け入れてもらえなくて。でも米米CLUBなら、ボーカルもいればダンサーもいるし、演劇っぽい要素もある。楽器隊も多いからいろんな人が参加できるし、これならいいんじゃないかと思って交渉したら、それが通って。米米CLUBの「sûre danse」を15人ぐらいでカバーしました。僕が石井竜也さんの役で、生徒会長をしていた友達にジェームス小野田さんの役をやらせて。演劇の持ち時間が60分ぐらいある中、バンドはもう1組と合わせてたったの10分。すごく短い時間だったけど、みんな「よかったね」と言ってくれて。そこで演者としての自信が培われたような気がします。もともと人前に立つのは好きだったけど、あんな大舞台は初めてだったし、終わったあとにお腹がギュッとなる感覚は、あのとき初めて覚えましたね。

カバーして感じたのが“ふざけても成立する”という米米CLUBのすごさ。「sûre danse」に「抱きあう You & Me」という歌詞があるんですけど、そのパートがメロディや歌詞を含めて、カッコつけすぎてないんですよね。「You & Me」でキメにいく感じが、カッコよすぎないところも含めてカッコいい。当時、周りではback numberやSEKAI NO OWARIが流行っていたんですけど、僕と清水はちょっと昔の曲を共有しては「こういうところがいいよね。このよさ、俺らしか気付いてないよね」みたいな感じで楽しんでいました。

米米CLUBという存在自体に惹かれてた
思い入れの深い曲は、やっぱり最初に好きになったきっかけでもある「君がいるだけで」。いきなり「たとえば」から始まるのがフックになっていて、子供心にすごいなと思ったのを覚えています。「なんですか これは」「FUNK FUJIYAMA」みたいな変な曲もめちゃくちゃ好きだし、「愛 Know マジック」も好きですね。DVDで「愛 Know マジック」のライブ映像を観たら、石井竜也さんがサビの前にすごく不思議なポーズをしていて。マイクを持って、膝を曲げて、頭の上から腕を回して……それを中学生の頃に1人でずっと真似していました。あとは、歌う前に口上があったり小芝居をしたりするのも、「こんなことをやる人がいるんだ」と衝撃で。そういう、演出や見せ方のオリジナリティが大好きなんです。歌詞をめちゃくちゃ読み込んだりするというより、米米CLUBという存在自体に惹かれていたというか。とにかくエンタメに振り切っているところに小さい頃から憧れていました。

世代が離れているからこその憧れ
米米CLUBは、音楽的にはブラックミュージックの要素が強いですよね。ファンキーなサウンドに、昭和歌謡の哀愁漂う雰囲気とキャッチーなメロディ。それがうまく合わさっているところが、当時の日本人には新しく感じられたはずだし、それを追体験するのも面白かった。自分は、世代が離れているからこその憧れも持っているような気がしていて。米米CLUBはバブルの時代に活躍された方たちだし、その当時だからこそ生まれたエンタテインメントだと思うんです。でも今の時代を生きている人間からすると、バブルが終わることってわかっているじゃないですか。それをわかったうえで米米CLUBの過去の映像を観ると、はかなさとか一瞬の輝き、そういうものが持つ美しさを感じる。もしかしたら失礼な見方なのかもしれないけれど、これも自分にとっての米米CLUBの魅力の1つです。

小さい頃からカラオケが大好きなんですが、1人のときは「TIME STOP」「Shake Hip!」あたりをよく歌います。あとこの前、友達が「ひとすじになれない」を歌っていて、「それ知ってるんだ」とうれしくなりました。「愛 Know マジック」もよく歌いますね。さすがに中学の頃にやっていた動きの真似まではしないですが(笑)。カラオケで石井竜也さんになりきることはないけど、友達に「歌い方が似てる」と言われたことがあって。その後意識して抑えるようにしたけど、当時の僕は無意識のうちに石井竜也さんっぽさが出てしまっていたのかもしれません。両足を広げて、片方の足でリズム刻みながら頭を左右に振って歌ったり、そういう仕草もよく真似していましたし。ネタ中の衣装も米米CLUBみたいに毎回変えたいと思っていたんですけど、それはさすがに費用がかかりすぎるのであきらめました(笑)。
胸を張ってやれば意外とみんな見てくれるんだ
「R-1グランプリ」の優勝会見で「米米CLUBが青春」と言ったのは、曲に救われたとかそういうことではなく、影響を受けたという意味合いなんです。何かを演じるうえでのロールモデルとして、ずっと自分の中に米米CLUBを据えてきた。すごくカッコいいし面白いけど、それと同時に不思議な空気や怪しさもまとっているあの感じ。そこは確実に影響を受けていると思います。あと「胸を張ってやれば意外とみんな見てくれるんだ」というのも石井竜也さんから学んだことかもしれません。曲前の一人語りや小芝居の“ふざけてるけどふざけ切っていない感じ”が僕にとってすごくツボで。「これ、どういう見方をすればいいの?」と一瞬わからないようなところがすごくクセになる。

米米CLUBは音楽的にはいろんな要素をミックスしているけれど、ビジュアルやキャラクターはちゃんと大衆に照準を合わせているという印象があって。そういうところも影響を受けているはずだし、無意識のうちに参考にしていると思います。自分も「最終的には大衆に受け入れられたい」という思いがあるし、そういうものに惹かれがちなのかも。例えばお笑いに関しても、ロバートさんやトム・ブラウンさんなど、綿密な構成とキャラクターが秀でたネタが好きで。キャラクターが強烈だけれど、とっつきやすさや丁寧さもあるというか。ロバートさん、藤井隆さん、劇団ひとりさんなど、演者としての立ち振る舞いという点で影響を受けた人はたくさんいるけど、石井竜也さんも間違いなくそのうちの1人です。ただ、誰かの模倣をするというフェーズはだいぶ前に過ぎたと思うので、これからは自分の見せ方をしていきたいですね。ちなみに、優勝会見で「共演したいのは石井竜也さん」と言ったものの、本音を言うと別に共演したくはなくて(笑)。会ったところで萎縮しちゃうだけだと思うし、共演だなんて恐れ多いので。ただ、「あのプロデュース力がどこから来ているのか」というのは、一度ご本人に聞いてみたいですね。
一番好きな曲ですか? うーん……難しいけど、ここは恥を捨てて「君がいるだけで」。やっぱり米米CLUBと出会ったきっかけだし、自分の中でずっと大切にしてきた曲でもあるので。こういうインタビューでここまでど真ん中の曲を挙げる人ってあまりいないと思うけど、恥じずにど真ん中を言えちゃうあたりも、もしかしたら米米CLUBからの影響なのかもしれません。

プロフィール
友田オレ(トモダオレ)
2001年福岡県生まれのお笑い芸人。2022年より芸能事務所・GATEに所属。「あらびき団」「ぴったり にちようチャップリン」といったネタ番組に出演し、2023年7月に「第44回 ABCお笑いグランプリ」の決勝に進出した。2025年3月には「R-1グランプリ」の決勝へと進み、最年少で優勝を果たした。
友田オレ|GATE株式会社
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提供元:音楽ナタリー