昨年11月から行われていたこのツアーは、GLAYのデビュー30周年と最新アルバム「Back To The Pops」のリリースを記念して計9都市を舞台に展開された。この記事では、最後の関東公演となった横浜アリーナ2DAYSより1月18日公演の模様を紹介する。
過去と現代のGLAYをつなぐ始まり
THE BLUE HEARTSや安全地帯など、「Back To The Pops」のコンセプトでもある80年代から90年代にかけてのJ-POPやJ-ROCKがSEとして流れる中、開演時間が迫り場内の空気も熱を帯びていく。ゆっくりと客電が落ち、観客の目の前に飛び込んできたのは、マンガ家・尾田栄一郎が描いたメンバーをかたどった4体の巨大石像。スクリーンの中ではオープンカーに乗り込んだメンバーが、ハリウッドの冒険映画を思わせる広大な景色の中をゆっくりと進み、物々しい遺跡へとたどり着くさまが映し出された。そして、遺跡の中へと足を踏み入れた4人の前には重厚な石扉が。その扉が開くと、逆光の中にTERU(Vo)、TAKURO(G)、HISASHI(G)、JIRO(B)のシルエットが鮮やかに浮かび上がり、ライブの始まりをドラマチックに告げた。
大歓声を浴びた4人は、サポートメンバーのTOSHI(Dr)と村山☆潤(Key)が待つ階下のステージへ。TAKUROが奏でる流麗なギターフレーズで始まったのは、90年代のJ-ROCKへのオマージュが込められた耽美で華やかな「なんて野蛮にECSTASY」。さらに「天使のわけまえ」「ASHES -1969-」という2000年代のナンバーが連投され、この日のライブが過去のGLAYと現代のGLAYをつなぐものになることがオーディエンスに印象付けられた。
30年分の愛を受け止めて
「こんな忙しい中、よくおいでくださいました。30周年も後半に入り、今日はここまでやってきたことを届けたいと思います。30年分の愛を受け止めてください。新しいスタートを切る皆さんに届けたい曲です」。そう口にしたTERUは1998年リリースのアルバム「pure soul」より「May Fair」を歌い出す。彼は観客の1人ひとりにエールを送るように力強い声を響かせ、「新しい旅路に、幸せを願っています」と優しく添えた。明るくポジティブなムードは「SOUL LOVE」にも引き継がれ、「まだまだ歌っていきますよ、皆さんと一緒に!」というTERUの呼びかけで大きなシンガロングが巻き起こる。HISASHIを筆頭にメンバーたちはステージサイドへと駆けていき、アリーナ中に響く歌声に耳を澄ませた。
GLAYの“青春期”とも言える90年代後期の楽曲に続いたのは、酸いも甘いも知る今の彼らだからこそ表現できるほろ苦い別れや、大人が抱える憂いを昇華した近年の楽曲群。「海峡の街にて」ではスモークが霧のように立ち込め、函館の景色を描き、「さよならはやさしく」ではJIROの指弾きによる太くまろやかなベースの音色が楽曲の世界観を引き立てた。
ライブ中盤でファンとの関係性を歌った「Buddy」で会場の一体感をより強固なものにした4人は、四季折々の景色を歌うミディアムナンバー「シェア」、「現代から30年後の未来を描くタイムリープ」をテーマにしたミュージックビデオも話題のエッジィなロックチューン「BRIGHTEN UP」といった、タイプの異なる楽曲でGLAYの幅広い音楽性を披露。「Back To The Pops」のコンセプトに基づいたセットリストながらも、4人は決して懐古主義的にはならず、あくまでも最新のGLAYを見せるパフォーマンスを届け、満員の横浜アリーナに熱狂をもたらした。
僕らはいつでも“あなた”のそばに
「たくさんの人たちに支えられて、この横浜アリーナのステージに立ってます。ありがとうの気持ちを曲に、歌に、楽器に詰め込んで皆さんに届けますので、僕らの愛情を受け止めてください」というTERUの言葉を合図に、トーチに炎が灯り、「Beautiful like you」へ。静まり返った会場にTERUの切実な歌声と、TAKURO、HISASHI、JIROによる穏やかなアンサンブルが響き、しみじみとした空気が広がる。ラストでTERUが「私はいつでもあなたのそばにいる」とささやくと、客席のあちこちから「ほうっ……」とため息が漏れた。
深い愛を伝えるバラード曲が残した余韻は、「whodunit-GLAY × JAY(ENHYPEN)-」のイントロが鳴り響いた瞬間に雲散。4人はギアをトップに入れると、アグレッシブなロックチューンを息もつかせぬ勢いで連投していく。TAKUROは豪快かつ円熟味のあるギターを聴かせ、HISASHIはきらびやかで鋭利な音色を紡ぎ、JIROは躍動感あふれるベースを奏でる。その中央でTERUはオーディエンスを扇動するように、アグレッシブに動き回り、衰えを感じさせない伸びのあるボーカルをアリーナに轟かせた。
このブロックでは特効や映像演出とともに楽曲が披露されたが、ひときわ大きな歓声が沸いたのは、デビュー20周年タイミングである2014年に発表された「疾走れ!ミライ」。30年にわたって撮影されてきたGLAYの映像がトンネルの壁面を埋め尽くし、それを背にメンバーが情熱的なパフォーマンスを繰り広げる。これからのGLAYの未来を照らすようにトンネルの先にはまばゆい光があふれ、その光景がオーディエンスの心を打った。
その後、「すごくいいツアーだったと思います。みんなに(僕らの思いが)伝わっているのがわかるツアーだった。これから40周年に向かっていく自信がつきました」と噛み締めたTERU。彼と同じように満足げな表情を浮かべたメンバーは、「You're My Home」「I'm Your Home」と歌うのどかなポップチューン「Back Home With Mrs.Snowman」を通し、「GLAYが自分たちとファンのホームである」ことを伝えてステージをあとにした。
「40年、50年と同じ夢を見てくれませんか?」
アンコールが始まるなり「どうでした? 今回のツアー。大好きだな、歌ってて気持ちいい」と切り出したTERUに続き、TOSHI、村山☆潤も交えてのMCへ。「今回のツアーすごく充実感があって、ステージでも楽しく演奏してます」と笑みを浮かべたJIROは、「B'zのバックでベースを弾いているのに、頭のコードが思い出せず慌てて起きた」とライブ当日に見た悪夢についてトークし、「だから今回のツアーの中で一番のプレイができた」と自身のプレイに胸を張る。HISASHIは昨今の芸能界事情にもやもやした感情を抱いていることを明かすも、「ライブをやったらすべてクリアになりました。皆さんのおかげです」と彼らしい言葉でファンへお礼を伝え笑いを誘った。さらにHISASHIは同日に東京ドームでライブを行っているL'Arc-en-Cielにも思いを馳せつつ、「東京ドーム、盛り上がっていると思います。いつかは対バンしたいと思います」と競演を熱望。来月に迫ったLUNA SEAとの対バン「The Millennium Eve 2025」への期待も膨らませ、「奇跡の夜になると思います。最高の一夜を約束します」と公約するなど、同時代を生きる同世代バンドへのリスペクトを表明した。
TAKUROは「このツアーが終わってもGLAYは止まりません!」とファンに未来を約束。「3月にまたいい企画が舞い降りてきまして。4月には音楽家人生で一番うれしいことが起きる」「こんなにも皆さんに愛されていると感じたことはない」とアーティストとしての充実期が続いていることを明かした。TERUも「30周年にしてすごく幸せな活動ができています」とファンやスタッフに改めて感謝の気持ちを伝え、「40年、50年と同じ夢を見てくれませんか?」と会場にいる全員に“プロポーズ”。その宣言を表現するように「HOWEVER」へとつなげ、ファンとの交歓を楽しんだ。TERUの常人離れしたシャウト混じりのロングトーンで口火が切られた「彼女の“Modern…”」を経て、4人が自分たちを模した巨大バルーンを背負い、ロックモードを全開にプレイした「ACID HEAD」をもってライブはクライマックスへ。最後は「また必ず会おうぜ。それまでいってきまーす!」というTERUのおなじみの挨拶に、会場にいる全員が「いってらっしゃーい!」と返すほほえましいやりとりが展開された。
なおGLAYは2月22日に東京・東京ドームでLUNA SEAとのツーマンライブ「The Millennium Eve 2025」を行い、3月9日には横浜アリーナで開催されるライブイベント「BEAT AX Vol.6」にENHYPENとともに出演。4月にファン投票によって収録曲を決めるベストアルバム「DRIVE 1993~2009-GLAY complete BEST」「DRIVE 2010~2026-GLAY complete BEST」を発表したのち、5月31日と6月1日に東京・東京ドーム、6月8日に大阪・京セラドーム大阪でアニバーサリーイヤーを締めくくるドーム公演を行う。
セットリスト
GLAY「GLAY 30th Anniversary ARENA TOUR 2024-2025 "Back To The Pops" Presented by GLAY EXPO」2025年1月18日 横浜アリーナ
01. なんて野蛮にECSTASY
02. 天使のわけまえ
03. ASHES -1969-
04. May Fair
05. SOUL LOVE
06. 海峡の街にて
07. さよならはやさしく
08. Buddy
09. シェア
10. BRIGHTEN UP
11. 口唇
12. 紅と黒のMATADORA
13. Beautiful like you
14. Eternally
15. whodunit-GLAY × JAY(ENHYPEN)-
16. Romance Rose
17. 会心ノ一撃
18. 誘惑
19. V.
20. 疾走れ!ミライ
21. Back Home With Mrs.Snowman
<アンコール>
22. HOWEVER
23. 彼女の“Modern…”
24. ACID HEAD
提供元:音楽ナタリー