コメ輸入を9月1日から10月30日まで60日間停止することを盛り込んだ大統領令93号が8月29日、ベルサミン官房長官の署名で発布され、30日に公表された。国内の稲作農家による収穫期がピークとなる時期に国産米の市場供給を優先的に進め、農家渡し価格を安定させるために外国産米の輸入を一時的に制限するよう農務省が勧告し、マルコス大統領も8月上旬にコメ輸入の60日間停止を実施すると発表していた。8月31日付け英字紙スターが報じた。
大統領令によると、輸入停止の対象となるのは外国産米でも通常精米と精白米に限られ、国内の稲作農家が通常栽培していない「スペシャルティライス」と呼ばれる特殊米品種については対象から除外されている。また、農務省や経済計画開発省、貿易産業省に対し、発効から30日以内に輸入禁止による国内のコメ市場の供給面や価格面での影響を評価し、大統領にコメ禁輸措置の短縮や延長を含めた勧告を行うことが義務付けられている。
フィリピンでは国産米の収穫が今年は順調で、1~6月期の籾米生産量は908万トンと過去最高を記録。農務省は年間生産目標を2046万トンに設定し、目標達成に向けて順調な推移をこれまで見せている。
一方で、インドによるコメ輸出規制解除や主要輸出国での豊作などにより世界のコメ価格は前年に比べて大幅に下落しており、比の輸入業者はベトナムなどからの購入を拡大。今年4~5月に約97万トンを輸入するなど依然輸入量が高水準で推移しており、比国内でのコメの取引価格にも影響が出ていた。農務省によると、一部の地域で農家渡し価格が1キロ8ペソと推定生産コストである同12ペソを下回るなど、農家が苦境に陥いるケースも出てきており、コメの輸入停止措置を求める勧告につながった。
国家食糧庁によると、大統領がコメ輸入停止を実施するとした8月上旬の発表を受けて、主要生産地域13地域のうち6地域でコメ買い付け価格が上昇、中部ルソンやビコール、中部ビサヤなどで最大2・6%まで上昇したとの報告が寄せられている。(澤田公伸)