米国との関税交渉に当たった経済閣僚トップのフレデリック・ゴー投資経済担当大統領補佐官は24日、米追加関税を20%から19%に引き下げることと交換に輸入関税を撤廃した品目の中に、マルコス大統領が明言した自動車のほか、小麦、大豆、医薬品も含まれることに言及した。
一方で、コメ、砂糖、トウモロコシ、豚肉、鶏肉、海産物は含まれていないことを確認。「開放した品目は国内で生産していないものだけで、農業をはじめとした国内産業は影響を受けず、逆にパンや飼料の価格が下がり利益が大きい」と説明した。
ただし、自動車についてはトヨタや三菱など比に生産拠点を構え「国内生産」を行う日系メーカーが比市場のシェアの大半を占めている。自動車関税率の半減を引き出した日本とは対照的に、現地生産車であっても比資本による「純国産車」がほとんどないために、自動車市場を「献上」する政治決定がなされた格好だ。日系自動車メーカーは輸入米国車との競争圧力にさらされることになりそうだ。
大幅な関税率引き下げを引き出したベトナム、インドネシアに比べ、比の妥結点はわずか1%の引き下げ幅(元々の17%より引き上げた20%を基準)で、関税水準も2国と同水準の19%となったことを受け、比国内では懸念や不満が噴出。それについてゴー氏は、「ベトナムに対しては2種類の関税率がある。基本は20%だが、積替え輸出に40%の関税が課される。大部分が輸入品由来の製品には積替え輸出税率が課されるだろう」とした上で、「ベトナムは完全に市場を開放したが、われわれはそうではない」と説明した。
同様に、比と同じ19%の関税率で妥結したインドネシアについても「インドネシアは(ほぼ)全ての品目の関税を撤廃したうえ、さらにボーイング社の飛行機50機の購入を約束した。比はそのような約束はしていない」と強調した。
同氏はまた、「交渉はまだ終了していない」とし、細部については作業部会が引き続き協議していると説明した。ロムアルデス駐米大使は24日、関税交渉を最終的に妥結するための交渉が数日中にフィリピンで行われると述べている。
▽割に合わない取引?
元政府関税委員で経済学者のジョージ・マンザノ博士(アジアパシフィック大)は英字紙ビジネスミラーなど複数のメディアの取材に応じ、相互関税の影響について「相互関税により全ての国の経済状況は悪化するが、悪化の仕方にも偏りが生じる」と解説。ベトナムやインドネシアなど米国からの関税の引き下げと交換に、米国製品に対する関税を撤廃した国について、「関税率引き下げを買ったようなものだ」とした。
46%から20%への引き下げで合意したベトナム、30%から19%への引き下げとなったインドネシアに比べ、20%から19%への引き下げ幅となった比については「1%当たりの対価がより高い可能性がある」と指摘。「20%の関税率を受け入れて、何も妥協しないほうが、フィリピンの利益になった可能性もある」とした。(竹下友章)