Logo

26 日 マニラ

33°C23°C
両替レート
¥10,000=P3,780
$100=P5,720

26 日 マニラ

33°C23°C
両替レート
¥10,000=P3,780
$100=P5,720

比の絹生産を支える ネグロス拠点に成長する養蚕産業

2025/3/26 経済
養蚕研修センターの渡辺重美所長

日本の公益財団法人オイスカによる支援でネグロス島で養蚕産業が根付く

日本の公益財団法人オイスカ(OISCA)によると、ビサヤ地方のネグロス島は、フィリピンにおける絹の生産量の約9割を占める。1980年代からオイスカによって始められた支援により養蚕研修センターが同島バゴ市に開設されて以来、同センターでは養蚕から製糸までの全工程を行ってきた実績がある。同島の事業をモデルに、ミンダナオやルソン地方でも養蚕事業の開発が現在進められている。

 絹の生産は、蚕を育てる養蚕と、繭(まゆ)から生糸を取り出す製糸とに分けられる。「農家が自力で製糸の設備を揃えるのはとても難しい」と同研修センターの渡辺重美所長(74)は言う。現在、同センターは蚕を卵から育て、農家に売り、育った繭を買い上げている。繭は同センターの製糸機械により生糸になり出荷される。

 オイスカは1967年から比で食糧増産を目的とした農場支援の活動を行ってきた。渡辺所長は職員として73年に比に派遣され、ミンダナオの農業大学で指導を行なってきた。現在の西ネグロス州バゴ市の研修センターは1988年にオイスカ静岡県支部の援助で同市にあった農場を買い上げ開設されている。

 80年代のネグロス島は主要輸出品である砂糖の価格の低迷により、大規模な経済危機と食糧難に陥っていた。炭作りやトウモロコシの栽培などで生計を立てていた同島山間部の農家への支援を目的として、養蚕指導が行われた。

 89年に石川県能登の養蚕組合の支援により技術者が現地に派遣され、蚕の食糧である桑畑の栽培が行われた。その後、蚕の卵である蚕種を日本から取り寄せ、蚕の試験的飼育に成功する。

 ところが、この活動が一部の住民の不審感を買い、日本の技術者が誘拐される事件が起こる。「我々は農家のために、収入を少しでも増やしてあげることができればという思いでやっているのだということを一生懸命話しました」と渡辺所長は、事件当時の説得の様子を語った。技術者の身柄は解放されたが、ネグロス島で活動していた日本のNGO支援事業が治安悪化を理由に次々と撤退した。この事態についてコラソン・アキノ大統領=当時=も懸念し、渡辺氏は同州にとどまり、ネグロス島の養蚕農家を能登に研修に派遣するなどの指導を行い続けた。

 ▽現地での製糸を模索

 1995年にネグロス島内での養蚕が本格的に始まり、98年には1トン半の乾燥繭を長野県松本市の製糸場に輸出し、一定の評価を受けるようになる。しかし、繭の輸出にかかる経費の問題から、現地での製糸を模索し始める。当時、日本の養蚕業は衰退しており、各県の繭の検定施設の閉鎖が相次いでいた。閉鎖される繭検定所の製糸機械を譲り受けることが決まり、日本の外務省の支援によりバゴ市の研修センターに移送された。これらの経緯により、99年から蚕の飼育から生糸の生産までが同地で可能になる。さらに2006年にはフィリピン産の蚕種(蚕の卵)の開発にも成功する。その間、国際協力機構(JICA)の養蚕普及プログラムの一貫として、2000~03年、12~15年の2度にわたり3年計画の支援を受けている。

 現在、同センターでは70軒あまりの養蚕農家と取引を行っており、これらの農家はネグロス島のムルシア、バゴ、サンカルロス、カラトラヴァ、タリサイなどに広がる。渡辺氏によれば、農家一軒あたり4000~5000平方メートルの桑畑を所有し、一年を通じて4、5回繭が育てられる。一軒あたり年に約80キロの繭が同センターに届けられ、買い取られる。1995年当時は1キロあたり80ペソで買い取っていたが、現在は約320ペソで買い取られるという。

 センター内にある製糸場では、約10人の従業員が朝8時から午後5時まで機織りなどの作業に従事している。一部は群馬県の養蚕農家で研修を受け、日本語を話す。主に徒歩圏内の農家の女性が多く、ほとんどが10年以上同センターで働いている。18年間ここで機織をしているアナリンさんは「1カ月に約20メートル、比の正装バロン・タガログ約5着分に相当する絹の反物を織る。」と話した。

 ▽ネグロスで絹生産確立し普及へ

 現在、同センターで生産される生糸は年間600キロあまり。艶の良さが評価され、その8割は機織業者に出荷され、土産物などの素材に使われているという。2005年からは、ショールなどオイスカ独自商品の製造も始めており、1カ月に50本ほどが作られる。これらは現在、バゴ市の販売所や年に数回首都マニラで開催されるネグロス物産展などで販売されている。

 2021年の台風により桑畑や繭の飼育施設が被害を被ったが、オイスカやJICAの支援により、翌年には復旧した。渡辺所長は現在の状況について「今、農務省は農家への支援に力を入れている。このセンターの製糸機械の老朽化も進み、いかに維持していくかが問題だ。さらには、独自のデザインを施した絹製品も模索していきたい」と語る。

 同州での養蚕事業をモデルに、他州での事業も進められている。渡辺所長は「ネグロス島の養蚕事業をモデルとして、この4月からミンダナオ、そして中部ルソンの養蚕事業も進めている。すでに各地から研修生を受け入れている」と教えてくれた。

 最後に渡辺所長は「日本のシルク産業はすでに衰退して、いまは養蚕農家も200軒ぐらいしかない。だからこそ、ぜひ比で続いていければと思う。そして、養蚕をやることで少しでも農家が生計を立てることができれば」と強い思いを語る。

 ビサヤ地方西ネグロス州バゴ市の養蚕研修センターでは現在、養蚕から絹製品の製造まで行われ、比国産のバロン・タガログなどの生産に貢献している。(川上佳風)

おすすめ記事

比の絹生産を支える ネグロス拠点に成長する養蚕産業

2025/3/26 経済 無料
無料

外国人旅行者向けVAT免税発効

2025/3/26 経済 有料
有料

東南ア株式まちまち PSEiは6159.85

2025/3/26 経済 有料
有料

ソウル株式続落 現代製鉄が安い

2025/3/26 経済 有料
有料

インド株式続伸

2025/3/26 経済 有料
有料

シドニー株式ほぼ横ばい

2025/3/26 経済 有料
有料